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12 最奥の扉


 3つ目の扉、発見。

 今度の祭壇には、


「――『小さき命を捧げよ』」


 と記されていた。


 小さき命か。

 ふむ。


「……」


「………………」


「…………」


「……」


 全員分の視線がシーバに集まった。

 サイズ的には小さい命だもんな。


「きゅぃ……! きゅぃ……!」


 シーバは俺の頭の上で精一杯やんのかステップしている。

 可愛い奴め。

 仕方ないな。


『生命探知』――。


「そこの瓦礫の下、ネズミがいるな」


 シュパパパパ、とシーバは転生以来最も素早い動きでネズミを捕らえて戻ってきた。

 命拾いしたな。


「よこせ、雑魚が!」


 イザックが手柄をかっさらっていった。

 無慈悲にも祭壇に放り込まれたネズミは火で炙られたみたいにもがき苦しみ、血みどろになって息絶えた。

 そして、第3の扉が開かれる。

 ああならなくてよかったな、シーバ。


「きゅぅ!」


 しかし、骨、生き血ときて、今度は小動物の命か。

 段々、要求がエスカレートしているような。

『贄の迷宮』か。

 次の生贄はなんだ?


「おい! また扉があるぞ!」


 イザックが無警戒に飛び込んでいって、そう叫んでいる。


 ホントだ。

 魔王城の玉座の間に繋がっていそうな巨大扉がそびえ立っている。

 この先が最奥の間だと肌感覚でわかる。

 中にいるのは、魔王ではなく迷宮主だけどな。

 そして、宝剣が置かれているはず。

 宝剣を持ち帰れば、このパーティーは合格だ。

 第2次試験に駒を進めることができる。


「おい、荷物持ち! とっとと祭壇の文字を読み上げろ! この無能が!」


 イザックがまたキャンキャン言っている。

 その無能がいなければ、死んでいたの誰だっけ?

 怒っちゃダメだ。

 大人の対応をしないとな。


 扉も大きいが、今度は祭壇も大きかった。

 バドミントンくらいならできそうな広さがある。


 石の台座に刻まれた文字は、


「『なんじの友を捧げよ』」


 ――だった。


 友というと、仲間だよな。

 つまり、パーティーメンバーの中から誰かを生贄にしろってことか?

 聖女か、賢者か、剣聖か。

 誰であれ嫌だよな。

 たぶん、さっきのネズミみたいにひどい死に方をするわけだろうし。


「……」


「………………」


「…………」


「ええっと、何?」


 なんだか俺に視線が集まっているみたいなのだが。

 シーバのときみたいに。

 嫌な予感がする。


「なあ、荷物持ち」


 イザックが朗らかな笑顔で俺の肩に触れた。


「オレたち、ダチだよな?」


 ほら、きた。

 嫌な予感、的中だ。


 ラウルも俺の肩に手を乗せて言った。


「君の無価値な人生に僕らが意味を与えてあげよう。さあ、命を捧げたまえ。仲間のために死ねるんだ。尊い行為だと思う。僕は君を初めて尊敬したよ。女神様もきっと喜んでおられる」


 俺は会ったことあるが、そんな人じゃなかったぞ。

 もちろん、俺は生贄なんて反対だ。


「なあ、サポーター君、少しは考えてみたらどうだ?」


 ラウルが馬鹿を見下すような目を向けてきた。


「君の役割はなんだ?」


「お前たちのサポート役だが?」


「それは、違う」


 ズレてもいない眼鏡をスチャッ、と直してラウルは言う。


「君は生贄役だよ。最初から君は生贄としてこの試験に招待されたんだ」


 生贄役ぅ? とイザックが首をかしげる。


「ガルラント司祭の言葉を覚えているだろう? たとえメンバーが欠けても合否に影響はないと司祭はわざわざおっしゃっていた。あれは、僕たちに向けたヒントだったんだ。サポーターを生贄として使え、というね」


 あー、そういえば、そんなことを言っていたな。

 それも、妙に強調していたっけ。

 なるほど。

 俺が招待されたのも納得だ。

 孤児なら死んだところで騒ぐ身内なんていないからな。

 俺の場合は、ミルカたちシスターズが黙っていないだろうけど。


「うおおおお! ラウル、マジ頭いいな! さっすが賢者候補だぜ!」


 イザックが感銘を受けたとばかりに目を輝かせながら、剣を抜いた。

 切っ先を俺の胸に突きつけてくる。


「祭壇に上がれ、雑魚が」


 雑魚はお前だろう。

 俺は剣の腹に手を添えて、イザックの足を払った。

 無重力空間に投げ出されたようにイザックは宙をふわりと舞って、背中から地面に落下した。


「ぐあ……!?」


 俺は奪った剣をくるりと回してイザックの喉仏に突きつける。


「剣聖候補が剣を奪われてどうする? それも、荷物持ち相手に」


 この程度の実力では剣聖なんてなれるわけがない。

 他人の命を犠牲にするほどの可能性は、お前にはない。

 どうあがいても飲み屋のチンピラ止まりだ。

 試験は諦めて、ここで引き返せ。


「……」


 魔法を撃とうとしたラウルに俺は鋭い視線を投げかけた。

 すると、ラウルは糸を切られた操り人形みたいに、ぺたんと尻餅をついた。


『ヘビ睨み』だ。

 視線に魔力を込めることで、目が合った相手を怯ませることができる。

 眼鏡があってよかったな。

 なければ、間違いなく失禁していたぞ。


「わ、わかったって、へへ! そんなに怒るなよ、冗談だって、へへ!」


 イザックはよろりと立ち上がって、セーナのもとに向かった。


「悪りぃ、肩貸してくれ。今ので骨が折れちまったみたいだ。治癒してくれよ」


「仕方ないわね」


 ラウルがセーナの肩にすがって――

 そのときだった。


 ドン、と音がした。


 セーナが膝から崩れ落ちる。

 その腹には拳がめり込んでいた。

 イザックの拳が。


「生贄なんて別に誰でもいいんだって。オレが試験に受かりさえすればそれでいいんだ」


 止めるのがわずかに遅れた。

 まさか、そこまでするとは思わなかった。

 俺は目を見開いた。


 イザックが放り投げていた。

 うずくまるセーナを祭壇の上へと。


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