11 三聖人からパクった
扉を越えると、雰囲気が少し変わった。
草木が生い茂り、湿った匂いがする。
遺跡っぽさは残しつつ、ジャングル風味を加えた感じだ。
『生命探知』の魔法を発動すると、たくさん反応が返ってきた。
警戒して進むべきだと思うぞ?
イザックの背中に心の声をかけるが、伝わらなかったらしい。
彼は大手を振ってズンズン歩いていく。
無人の野を行くがごとしだ。
案の定、魔物の襲撃を受けまくって大変だった。
せっかくトラップの位置を教えてやっても、
「サポーターの意見なんて信じられるか」
と、わざわざスイッチを踏んでしまうのだ。
濁流に流されそうになったり、火炎の渦に呑まれかけたりと散々な目に遭った。
「ガギギギギ……ッ!」
「グゲゲッ! ゴゴゲ……!」
そして、相変わらずイザックが騒がしいので、魔物が夏の蚊みたいに群がってくる。
今度のはゴブリンだ。
体格は幼稚園児と大差ないが、チームワークは魔物の中でもトップクラスだ。
「うらあああああ!!」
馬鹿の一つ覚えでイザックが突っ込んでいく。
何匹か蹴散らしたが、脇をすり抜けたゴブリンが棒立ちのラウルに狙いを定めた。
「う、うわああ! うわあああああ!」
パニクって振り回した杖が壁に当たり、バキッと折れると、
「――――――――」
周囲は真の闇に包まれた。
「ギギギギギ!」
「お、おい! うああ! 何も見えないぞ……!」
「グギギゴゴゴ!」
「このやろぉ! うああああ! あああ!」
「ゴギギギギギ! ギギギ!」
「明かりぃ! おい、誰かああああ!」
「ギギギギギ! ギャギャギャ!」
「きゃあ! ちょっと、やああ!」
「……はあ」
恐慌をきたして転げまわる三人の姿が『暗視魔法』でくっきりと見える。
もう、ため息しか出ない。
仕方ないから、助けてやるか。
「――『龍精灯』」
俺は手に明かりを灯した。
目をくらませたゴブリンたちが顔を押さえてうずくまる。
イザックが取り落とした剣を拾い上げ、
「六式剣舞『紅時雨』――!!」
俺はほぼ一瞬ですべてのゴブリンを斬り捨てた。
赤い雨がザァ、と降ってくる。
「な、なんだよ、その剣技……。速すぎて見えなかったぞ」
イザックが呆然とした顔で見つめてくる。
昔、剣聖からパクった技だ。
「なんで君ごときが僕より上位の魔法を使っているんだ。それも、杖も使わずに」
ラウルがズレた眼鏡越しに睨んでくる。
これも昔、賢者からパクった技だ。
「それ、龍精霊なの?」
セーナの整った顔立ちがオレンジ色の光で照らされている。
「微精霊じゃこんなに姿がくっきり見えたりしないわ。光の精霊ってこんなに美しい姿をしているのね」
美しいか?
俺には虫にしか見えない。
精霊は魔力が集まって生まれた生き物らしい。
シーバの毛並みに惹かれて寄ってくるから、捕まえて飼い慣らしているのだ。
さすが、シーバだな。
「きゅうぉん! きゃうきゃう!」
おーよしよし。
「ゲぼシャアア……ッ!??」
突然、イザックが吐血した。
ぶっ倒れて、ガタガタ震えている。
腕に切り傷。
そばには、血のついた黒曜石の剣が落ちている。
ゴブリンに一撃もらったのか。
刃に毒が塗られていたに違いない。
「解どぉ……。げ、ど、ぐぅ……」
「せ、せかさないで! 解毒の魔法は難しいんだから!」
セーナはあたふたするばかりだ。
そうこうしているうちに、イザックは白目を剥いて泡を吹き始めた。
あと10秒くらいで死にそうだな。
見殺しにして、女神に怒られたくない。
「『癒やしの聖掌』っと」
俺が治してやった。
イザックは何事もなかったように、むくっと起き上がった。
「今のは聖女の魔法だわ。どうして、あなたが使えるのよ?」
セーナが詰め寄ってきたけど、答えようがないな。
昔、聖女からパクったとしか。
「まさか、女だったの?」
いや、それは違う。
だから、胸を揉んで確かめようとすな!
◇
その後も三人に成長は見られず、ほとんど俺がおんぶに抱っこでキャリーしてやった。
そして、2つ目の扉が行く手を遮る。
前回同様、祭壇があった。
「おい、読めよ。お前」
と、イザック。
当然のように俺を頼るな。
お前たちの試験だろうに。
でも、俺しか読めないもんな。
「――『なんじの血を捧げよ』だってさ」
最初の扉は拾った骨で通れた。
今回は自分たちの血が通行料か。
「血か。これでいいのか?」
イザックが腕に残った血を祭壇にこすりつけると、扉が開かれた。
「さすがだな、イザック」
「だろ? お前の魔法にも助けられているぜ、ラウル」
「当然だ。僕は天才魔術師だからな」
「オレだって剣聖になる男だぜ!」
なんだか知らないが、二人の間に友情が芽生えている。
「ほとんど、あなた任せだったのにね」
セーナも呆れ気味だ。
俺はセーナにもまあまあ呆れているけどな。
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