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ベートーヴェン交響曲第9番予想


  "This piece(The 9th), I thought, must surely contain the secret of all secrets."

 — Richard Wagner


 "この作品には、私が思うに、疑いなくあらゆる神秘の神秘が内包されているであろう "

 — リチャード・ワグナー




 1;予想提議


 ベートーヴェンの交響曲第9番は、万物の芸術[1]の一部である。




 2;説明


 ベートーヴェンの交響曲第9番は、音楽の集大成である。


 ベートーヴェンの交響曲第9番という作品は、歴史的に俯瞰してみると、人類史の音楽の集大成と位置づけられる。バロック音楽の集大成者であるバッハの対位法的手法を取り入れ、ハイドンが築き上げた古典派の交響曲をモーツァルトがさらに熟成させた形式を元に、またロマン派音楽を先取りしたように合唱も組み込み、それらを統合的に組み合わせ、単に古典派音楽という枠組みすらを超越した、人類史上最も統合的な音楽を完成させた。


 ベートーヴェン以降の音楽主義の歩みは、調性の崩壊によって位置づけられる。


 つまり結局のところ、ベートーヴェンが登った山が人類の音楽史上最も高かった山頂なのである。それが第九であり、その最終楽章は、その山頂から見えた景色とも考えられる。


 しかし音楽、それはあくまでも、芸術の一つの部分に過ぎない。


 音楽には具体的な映像、そして最も重要な、総体が、欠いているのだ。第九はあくまでも、何かさらに大きな総体の一部に過ぎないとも言えよう。 芸術の世界には、芸術そのものの集大成があり、ベートーヴェンの第九を伴う公式の芸術とも言えるような、そんな作品が存在するだろうと予測する。


 音楽の集大成を内包するような、そんな芸術とは、いかなるものか。


 万物の芸術である。




 3;背景


 21世紀は、統合の世紀である。


 20世紀において、アインシュタインによる相対性理論とマックス・プランクやニールス・ボーアを中心とする量子力学は栄華を極めた。巨視的な物理理論である相対性理論は、これまで人類が探求すら許されなかった宇宙という広大な世界に光を与え、宇宙の誕生という究極的な問にも有意義な意味を示唆した。微視的な物理理論である量子力学は、原子などの仕組みを明らかにして、トランジスターなどの技術的な発展にも大いに貢献した。


 だがしかし、この2つの理論は、究極的な問いに対して、答えを与えることは出来なかった。


 物理において極限的な状況、言い換えれば、微視的なスケールにおいて高エネルギーが与えられる現象は、相対性理論と量子力学の統合が必要になるからである。だがしかし、安直に2つの理論を繋げようとすると、すぐに矛盾に遭遇してしまう。


 20世紀が終焉を迎えようとすると、それらの理論の衝突は、人類にまた明確な方向性、課題を与えた。万物の理論、つまり巨視的な物理と微視的な物理を統一的に記述する、究極的な理論の構築の必要性である。


 万物の理論の構築には、根本的な概念の修正が必要である。

 

 物理学の世界では、超弦理論という理論が、20世紀の終わりまでに、人類史上初めて有意義な万物の理論の候補として登場した。それは、原子論から始まり素粒子論に進化した延長線上の世界である。最小構成物質は点ではなく、高次元の物体であるとする理論であり、自然界に存在する4つの力、すなわち電磁相互作用・弱い相互作用・強い相互作用・重力を統一的に表現することが出来ることを示唆する。


 万物の理論を追い求める弦理論とは、主な目的は異なるのだが、ループ量子重力という理論もまた、超弦理論の他にも、量子重力理論研究の有力な候補として誕生した。この理論では、時空間は連続的なものではなく、離散的になっている。


 これらの理論の究極的な追求、目的は、一見すると異なるものだが、最終的には、同じ終着点に収束していく。ここでもさらに、統合という概念が顔を出すのだ。

 

 統合が必要とされるのは、科学の世界だけではない。




 芸術の世界でも、万物の芸術という概念が、21世紀に登場した。

 しかしこの概念の示唆するものは、科学における統一理論の重要性よりも偉大である。なぜなら、万物の芸術は、さらなる高次元の統合を意味するからである。時代の発展とともに距離が開いていった宗教と科学、その2つの分野が万物の芸術により統合され、再び、宗教と科学と芸術という、究極的な三位一体を形成することが可能なのだ。


 私は、宗教と科学と芸術の統合、21世紀までの人類の集大成こそ、ベートーヴェンが第九という山頂で見た景色、つまり、この万物の芸術の真髄なのではないかと、結論づける。既にその原型は私が紡いでおいた[2]。


 もし万物の芸術が存在し完成するならば、それは芸術という枠組みを完全に超越し、21世紀までの人類史上最高の文化的象徴、勝利、創造物になるだろう。




 万物の芸術は、21世紀までの、芸術の集大成であるとともに、人類の集大成である。




 4;最後に


 歓喜の歌より、


 ”汝が魔力は再び結び合わせる 時流が強く切り離したものを すべての人々は兄弟となる。”




 5;引用



1;万物の芸術予想 ( https://ncode.syosetu.com/n3819iv/ )

2;時和大学 999話 エンディング 双送式( https://ncode.syosetu.com/n7362in/2 )

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