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見えない方が良くない

作者: 村嶋
掲載日:2023/01/29

見えないものは無いのと一緒という言説もありますけど、とんでもありません。

見えない方がよほど怖いことだってありますよ。


これはDさんから聞いた話です。



昔から、見える人でした。

何かはっきり見えるというよりは、場所によってオーラというのでしょうか、もやがかかっているように感じることがありました。それで、その場所で昔なにかがあったんだろう…と察せる程度です。


交通事故が多発する交差点では、常に暗い雰囲気が漂っていて、日によっては何か大きなもやのようなものがうろうろと立ち歩いているのが見えました。

そういう日は決まって誰かがその場所で怪我をしたりするのでした。


そういう話を人にしたことはありません。信じてもらえないと思ったからです。だから、皆と一緒に行動するというときにそういったものが見えても、見ないように見ないように、素知らぬ振りで過ごしていました。


まだ学生の頃、学校と提携する合宿所へ行くことがありました。林間学校みたいなものですね。

そういう集まりでテッパンなのが、キャンプファイアー、星空観測、そして肝だめしでした。覚えがありませんか?


ただ、恐れることはありませんでした。毎年の恒例行事で、これまで何も起こっていませんし、その合宿所は毎年たくさんの学校が利用しているのですから。

肝だめしもそうです。夜に歩いても平気な道のり、先生による仕込みで作り上げられた“お楽しみ”なことを、ほんの一部の怖がりな人たちを除いて、みんな分かっていました。


肝だめしの内容はこうです。男女混合の5人組で、夜の森の中を歩く。その道は散策ルートになっているので、迷うことも足元をとられてしまうこともありません。一周回ると、皆のいる待機場に戻ってきて、それから次の集団が出かけることになります。

そんな具合ですから、さくさくと行事は進行します。あっという間に私たちの順番になりました。


5人の足取りは非常に軽やかでした。

「うわっ!」

時々、先生が待っていて、振り返って私たちを脅かします。みんな、少し手前から気づいていたので、「わあ!」と声を出して大げさに騒いでみせました。先生は満足そうにしていました。なんだかどちらが楽しんでいるのかわからなくなりますね。


今ので3人目だな、待機してる同級生たちのところにも先生がいたから、これで“仕込み”は終わりだな。

私はそんなことを考えていました。

しかし、少し先に目をやっていた男の子が小声で呼びかけました。

「もう一人いるぞ!」



私には何も見えませんでした。



「いる!」「いるいる!」「誰だろう?」

他の子たちもささやき合っています。

「ぼーっとしてるから、何人か先に行ってゆっくり近づいて逆に脅かしてやろうよ!」

「ビビってるとこ見たいな! やろやろ!」


私が何か言う前に、先に気づいた男の子ともう一人が、枯れ葉を踏む音を抑えて抑えて、先に進んでいきます。

「「わーーーっ!!」」

うす暗がりで見通しの悪いその先から、2人の笑いの混じった大声が聞こえてきました。



「ははははははは」

2人が、誰かと話しています。



私といた2人は“誰か”見えているようでしたが、明かりも付けずに話している様子をどこか異様に感じているようでした。




全員で待機場に戻ってきたときには、全員が静かになっていました。

“話していた”2人は、肩を震わせて笑いをこらえていて、それが私の目にはとりわけ不気味にうつりました。


全員で森から帰ろうというとき、やはり先生の数を数えても、あの“もう1人”はいませんでした。

私はやはりなかったことにはできないと思って、わざわざあの2人を呼び止めて、聞きました。

「あれ、誰だったの? 私夜目がきかなくて……わからなかったんだけど……」

聞いてしまいました。



2人は笑って私に言いました。


「なんかあ」


「来てくれたんだってえー」





この話は、やっと片がついたから話していいことになった、とDさんから聞いています。

ただし、場所や時期については、厳に伏せておいてくれ、ということでしたので、これ以上の詮索はよしてくださいね。

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