第9話:俺こういう事慣れてないんだよな
こちら第9話になりまーす。
俺たちは中間地点に無事ではなかったがたどり着く事が出来た。
(結奈の馬が騒ぎに乗じて逃げてしまったので、俺が乗っていた馬に2人乗りすることになった。)
すっかり暗くなった森の中で焚き火を囲み、今はゆっくりと結奈の足の治療をしている。
「……」
気のせいか、結奈の視線が熱い…気がする?
俺の自惚れ?気のせいか?
「気のせいじゃないわよぉ~」
読まれた。心読まれた。それにしても、気のせいじゃない?あれれ。
「なんかあったのか?」
「あったのよ」
結奈の緑の目が焚き火の灯を反射しキラキラと輝く。わざとなのか(わざとだろうね)ぐいっと胸を強調させて俺に上目遣いをしてきた。
「なっ、何だよ?」
やべ、声ひっくりかえった。
そんな俺に結奈はクスリと笑うと、
「かわいい…」
と言うなり俺にフワリと抱き付いた。
こういう事に免疫のない俺は一瞬クラッと意識が飛びそうになった。
しかし、ある女性が浮かんでくる。
――そうだ!俺には雪ちゃんしか見えねえんだ!
「へぇ、翔くんって雪が好きだったんだぁ」
「!!」
俺のばかやろ~。バレたじゃねえか。
そんな俺の心中にはお構いなしに結奈は続けた。
「ま、そんなこと関係ないけどぉ」
「へ…?」
キランッと結奈の目が光る。
「私が翔くんを虜にさせてあげるわ。雪なんか忘れちゃう位、ね」
結奈の顔が近付いたと思ったらチュッと音をさせ、離れていった。
「それじゃあ私はもう寝るわねぇ~。疲れちゃった」
「お、おう」
結奈が寝た後も俺はずっと動揺が続いていた。
――キスされた…。
俺のファーストキスはあっさりと終わりを告げた。
俺の予定では雪ちゃんに捧げる予定だったんだが、最近の女の人は積極的だからしょうがない、のか?
気になったんだがキスするってことは結奈は俺の事が好きってヤツか?
「……」
気晴らしに来たのに何でまた考え事してんだろう。……結奈の事は今は忘れて俺も寝ることにしよう。
俺はくわーっと欠伸をして地面にゴロンと横になった。
次の日は6時に起きた。保存食の乾いた朝ご飯を食べるとすぐに出発。
休憩を入れつつ進んで行くと、昼過ぎに目的地である洞窟に着いた。
そこから大ゴブリン退治に入る俺たち。しかしまあよくこんなに増えたもんだな。
洞窟には所狭しと大ゴブリンが詰まっていた。(多い上に臭いときた。最低だな。)
俺は腰の長剣を抜いて手近にいた大ゴブリンの急所を刺して絶命させた。(急所はチョビッと生えた尻尾だ。それを切るとパタリと逝っちまう。)
仲間の大ゴブリン達は殺した俺たちに一斉に襲いかかってくる。そうして戦いのゴングは鳴らされたのだった!
――で、結論。大ゴブリンは予想通り大した事なかった。
老婆とどっちが強いかと聞かれると即答で老婆と答えるね、俺は。
…それにしても泊まりがけで来たのにつまんなかったな。
「それもそうねぇ」
うわっ!思考読むなよ。焦るじゃん。慣れないんだからさあ。
「つまんないなら今から面白い事するぅ?」
――さっきの心の声はシカトか。うぅ、悲しいね。まあいいけど。
「面白い事?なんだそれ」
気になったので聞いてみた。
「こういうことよぉ!」
ドサッ!
「――え?」
俺は押し倒されていた。俺の腹にまたがった状態で俺の首筋を舐める結奈姉さん。いや~ん。
「ウフフ。さあ、いくわよ~。ジュル」
「――☆※◇@℃¢∞!!」
洞窟には俺の哀れな悲鳴が響き渡ったのだった。