第6話:近藤 結奈
AM8:53
俺は零国の軍の本部にいた。
昨日考えてみて結局あの少女(名前はレシルというらしい。まあどうでもいいんですけどね)を信じていいのか分からなかった。
だから気晴らしに任務でも受けようかなとここにきたわけ。
俺はそんなに考えるの得意な方じゃないからずっと考えるのは性に合わない。
現実逃避という訳じゃないが、身体を動かしてみると答が見つかる…かもしれんしな。
「零番隊の水無月 翔さんですよね?」
受付の女の子が話しかけてきた。目が照明のせいかキラッキラしてるような?
「ああ、そうだよ。なんか任務ねえか探しに来たんだけど…いいのねえかな?」
「それでしたら…大ゴブリン退治というのがありますが」
「何匹いるんだ?」
「ざっと10匹以上かと」
「物足りねえな~。ま、いっか」
俺は大ゴブリン退治を選んだ。大ゴブリンとは、名前の通りどでかいゴブリンで、平均2~3メートルはある。
トロールより動きは早く、頭がいいのが少し厄介なだけで弱っちい魔物である。
「私も一緒に退治に参加しようかしらァ?」
後ろから色っぽい声が聞こえた。
俺が後ろを振り向くと、なまめかしい女性が1人。新しく零番隊に入った女性2人のうちの1人だったような?
彼女の大きく開いた胸元から豊かな胸の谷間が大胆に覗いている。もう少しでポロリ――おっと!危うく胸の説明ばっかするとこだった。自重しまっす。
「ウフ、ポロリしちゃいそうでしないのが私よォ」
あ、そう。つか狙ってやってんのか。
アレ?その前に考えてることバレてんじゃん。
「私昨日の自己紹介で相手の考えてる事が分かる能力があるっていったハズだけどォ~?」
少しタレ目がちな緑の目が甘えるように見つめてきた。
ここで何か考えると相手にモロに伝わるから無心で見つめ返す俺。
見つめあったまま10秒程経過すると、相手の頬がポッと赤く染まった。
――勝ったな。
そう確信すると、受付の女の子に目線を戻し、大ゴブリンの出現する場所を聞いた。
場所はこの地域からそう離れていない場所らしい。と言っても、馬で行って1日野宿してやっとたどり着く場所なんだが。
しかし、泊まりがけか。女の子連れて行くと色々大変じゃねえ?
「おい、本当にこの任務受ける気あんのか?」
確認とらなきゃ後々面倒なことになったらたまらない。
「?
当たり前でしょォ?
それと私の名前は近藤結奈。結奈って呼んでねン」
「りょーかい」
結奈やっぱ付いて来るのか。
ああ、面倒臭い。
あ。この心中聞こえてんのかな。まあとにかく…
「じゃあ早速行くぞ」
任務を終わらせよう。俺は受付の女の子にミントのように爽やかに笑いかけ、受付を離れた。
「翔さん!に、任務終わったらご飯食べにいきましょう!」
そんな声が受付からこっちに届いた。俺は返事として振り返らずに片手を上げる。
くぅ~~!今の俺最高にかっこよくね!?
そんな事を思ってたら、結奈から脇腹を肘で突かれた。
また考え読まれたか。ちょっと恥ずかしいな。
――そんなこんなで、俺らの任務は始まったのだった。