第24話:人形のオジサン
明けましておめでとうございます(^∀^)
今年も小説を楽しんで書きたいと思います!
本日は休暇最終日。
お日柄もよろしいことで。
そんな日に俺は呼び出された。まあロイレンも一緒だけど。
皆さんはロイレンを覚えているだろうか?前回の任務で一緒だった、見た目ショタ少年で実は女の子のアイツですよアイツ!
俺達二人が向かうのは、ダンのオッサンの知り合いでやたら人形に詳しい人物がいるという占いの館。前の任務で俺達を襲った人形についての鑑定結果が出たらしい。
「ねぇねぇ!まだ着かないの~?ボクたこ焼き食べたいなっ!」
「そうゆうのは用事が終わって一人で行けよ?俺今日はたこ焼きじゃなくてラーメンって気分だし。」
「翔くん来てくれないの!?」
「うん。
…あ!見えたみたいだぜ?」
砂利道を歩き続けて15分。いかにも占いの館と言うか、魔女の館と言うか…とりあえず夜にはお化けが出てきそうな屋敷が見えてきた。
屋敷の壁にはお決まりの蔦が這っている。雷が鳴ったらさぞ絵になる事請け合いだね。今は眩しい位晴れてるけど。
「うっひゃあ~!怖いよ翔くん!」
うっひゃあ~?
ホントに怖いのか君。
俺怖さを表す為に両手を万歳する人生まれて初めて見たよ。
「さぁ入るぞ。怖いなら深呼吸しとけ。それ、ヒッヒッフー」
「あはは、馬鹿みたーい!」
ん?なんだと?
「心配してやってたのに…」
俺はわざといじけてみた。さあ困るがいいロイレンよ!馬鹿にした罪は重いんだよぶぁーか!
「ハイハイ、じゃあ屋敷のピンポン押しとくから。」
くそぅ!流された。
ロイレンの指が人の目を意識したデザインの黒目の部分を押す。
この屋敷の呼び鈴はピンポーン、ではなく女の気味の悪い声で「さァ…獲物のオデマシダヨ…」という音だった。悪趣味な!
『ダンが言っていた零番隊の者か…入れ』
どこからともなく低い男の声が聞こえてきた。この声の主はワイルドなゴツいオジサンと見たね!この屋敷とは不釣り合いだが。
「んじゃあ入りまーす!」
こんな陰気な所は元気でぶっ飛ばせ!ってな気分で明るく屋敷の扉を開く俺。後ろからは暗い屋敷の中を警戒する様にソロソロとロイレンが続いた。
「ひぇー!翔くん、蜘蛛の巣だらけだよここ!不気味な人形が沢山飾ってるし…」
「不気味な人形、とな?私の大事なコレクションだ。言葉に気をつけ賜えよショタボーイ。」
ユラリと現れたのは、ボロボロの黒いマントを着た多分さっきの声の主だった。顔はフードを被っているせいでよく分からない。
「なぁ、人形のオジサン。そのボロボロマントってもしかして…」
「あぁ、そうだ…これは零番隊のマントだよ。儂も昔零番隊に所属していたんでな」
「へぇー!俺らの先輩かあ!よろしく先輩!」
俺はにっこり笑って手を差し出した。
黒いマントのオジサンはその手を一瞥するとフッと笑う。
「この馴々しい態度…ダンの若い頃にそっくりだな。もっとも、容姿は全く似て無いがな。」
「あったりまえだ!あんなオッサンに似てたまるかよォ!」
血も繋がって無いのに似てたらそれはそれでホラーだが。
「翔くぅーん…」
ロイレンがクイッと俺の服を引っ張る。
「何だ?」
「ボクお腹空いたー。
早いとこ人形の鑑定結果を教えてもらえる様に頼めるかな?」
小声で申し訳なさそうに言うロイレン。ホント弟みたい……いや、ペットみたいだな。弟だったら男になっちまう。
「しゃーねえなっ。可愛いペットの為だ。」
ロイレンの頭にポンと手を置いて片目を瞑る。ロイレンは「可愛い…!?」と繰り返し言って口をパクパクさせていた。
「おー!赤くなっちゃって!かーわいーねぇ!」
俺が本格的にロイレンをいじろうとした時、
「……お取り込み中の所悪いが、鑑定結果知りたくないのか?」
人形のオジサンが割り込んできた。
「あー、そうだった。オジサン、あの人形について分かった事を教えてくれ。」
人形のオジサンはふむ、と頷くとマントの下の眼光を鋭くした…様な気がする。
「あの人形は南の国のドレイシア特有の木材が使われている。
人形を分解して中の仕組みを見てみたが、中の呪文を書いたインクもやはりドレイシアでしか採れない鉱物を細かく砕いて作った物だ。ここから分かる事は…」
俺はオジサンの言いたい事が分かってきた。後ろのロイレンもハッと息を呑んだとこからして気付いたようだ。
「そこのショタボーイを狙っているやからはドレイシアの者、又はドレイシアを拠点にして活動している…可能性が高い。」
中央に噴水がある零国で一番大きな公園。
そんなありがちな公園のベンチに俺達はいた。
「ホレ、たこ焼き。
腹減ってたんだろ?」
「ん、ありがとう…でも今はいいや」
明らかに元気のないショタボーイ…いや、ガール。ドレイシアに敵がいるって事で相当ショックを受けたらしい。ドレイシアに思い入れでもあるのか?
「話す気にはなれねえか?ドレイシアとお前の関係。」
「これはボクとドレイシアの問題だから…」
「一緒に襲われたのに俺は関係ねーってか?」
「それは…」
「…まー、いいけどよ。
近いうちに話せよ?俺も一緒に戦ってやるから。」
ロイレンはその言葉に目を見開き俺をまじまじと見つめた。
「そんな!迷惑…」
「じゃねーって。
同じ零番隊、同じ建物に住んでんだ。ペットはペットらしくもっと俺に甘えろ。」
…このセリフ(特に最後の方)なんかやらしいな。別にそうゆうつもりじゃなかったんだけどもー。
「甘えていーの…?」
「ロイレンはすぐ顔が赤くなるなー。
いいに決まってんだろ?」
俺はそう言いながらベンチを立つ。
「たこ焼き、しっかり味わっとけよ!
俺はもう行くから」
よし!帰ってから掃除して、食材買ってー…あと風呂掃除!洗濯もしなきゃな。
俺はこれからする事を頭で考えながら帰路についた。
まさかその夜にロイレンが俺の部屋に訪れるなんてこの時の俺は思いもしなかった。