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第22話:操

もう22話だ!早いなあ!


昨日の『オペーラ座の怪獣』騒動は俺たちの出番を待たずにあっさりと終わりを迎え、(前に言ったかも知れないが人生ってそういうもんだ)しとしとと雨の降る今日は、洋介とケンジョードが俺の部屋に集まっていた。


今日集まっているのは、魔法に詳しいケンジョードが昨日の資料の中からレシルがかけられた魔法を特定し、それについて俺たちが意見する為だった。


何故レシルがかけられた魔法を特定する必要があるのか疑問に思う人も多いだろう。


その理由については簡単だ。高度な魔法だが、呪文を行使した人物の居場所を特定する魔法がある。しかし、特定する為にはその行使された呪文についてしっかり把握しておかないといけないのだ。


つまり、レシルがかけられた呪文さえ分かれば呪文をかけた人物の居場所が分かってついでに宗教団体の場所も特定出来るって訳。


本来なら宗教団体の場所はレシルに聞けばいいのだが、本人曰く「火をつけて燃やしてきた」らしいので今は場所を移動している可能性が高い。レシルが火さえつけてなければ今頃宗教団体を捕まえに行ってるのに。くそう。



「どうだ?何か分かったか?」


俺は資料に目を落としているケンジョードに尋ねた。


「う~ん、で御座る」


「そこは御座るいらねえだろ」


実はというとさっきからこの調子だ。

俺が尋ねて、ケンジョードが曖昧に返す。ヒットアンドアウェイだ(使い方間違ってるよな?)。


洋介はプー太郎で遊んでるし、俺もケンジョードに数分置きに尋ねる以外やる事がない。


――暇だ。


「雪ちゃん…」


最近会えてない。同じ建物内にいるのに会えないもどかしさ?凡人のキミタチには分からんだろう。え?分かる?あっそ。


ふと目を上げると洋介と目が合った。表情から察するに、雪ちゃんの名前呟いたのが聞こえたらしい。


「雪さん、知ってるとは思うが前回の任務で俺と一緒だったんだよなあ~。いや、悪いね?雪さんの初任務お前じゃなくて俺が一緒で」


「コロス」


「うわぁ~!待て待て!謝るから剣をしまえ!雪さんがお前について言ってた事教えるから!シットダウンプリーズ!」


「……」


俺は剣を腰に収め、ドッカとあぐらをかいて座った。


「で?俺の事なんて言ってた?」


「お前ワクワクし過ぎ…。昔から感情がすぐ顔に出るよなあ」


「うるせえ。雪ちゃん、何て?」


あ~気になる。雪ちゃんは俺の事どう思ってるんだ?とりあえず、好印象であって欲しいが。


「えっとお…たしか『親睦会で最初に仲良くしてくれた優しい人』とか言ってたような…」


「え゛?!それだけ?」


明らかにただの友達に対する感想って感じじゃね?!もうちっと「ちょっと気になる」とかいう類いの感想かと……。ハァ。


「高望みしちゃダメだぜ。お前は親睦会の時以来、全然雪さんと交流ないんだからしょうがないんじゃねーの?」


「交流…ない…つまり…アピールできて…ない…」


俺は呆然とした。好きならアピールをする。これ世界の常識だもんな。


そんな俺に洋介は頷きながらトドメを刺して下さった。


「そうそう。もしかしたらお前って今雪さんの中で印象薄くなってんじゃねーの?」


「ぐぁ!」


「どっちかっつーと、今はお前より俺の方が雪さんと付き合う確立あるかもな?」


「うっ!」


そうか…そうなのか…。俺は雪ちゃんを洋介に取られかけてるのか…。


「洋介をここで亡き者にすれば…」


「ちょっと待って!さっきのはものの例え!そんなに嫌なら俺たちの解散後雪さんに会いに行けばいいじゃねえか!俺まだ死にたくねぇっ!」


ふむ、会いに行くっつーことはつまり、アピールか。今は休暇中の4日目だし、休暇なんて過ぎるのはあっという間だ。休暇中の今の内にアピールするのも悪くねぇな?


俺は早く終わらないかとケンジョードを見た。ケンジョードは今も熱心に資料を覗き込んでいるようだ。俯き読んでいるせいで黒い前髪で目が隠れてしまっている。


「……ん?」


何かおかしい。ケンジョードの頭が微かに上下に揺れている。


「おい、翔」


洋介が不思議な表情を浮かべて俺に目配せした。


「おう」


俺は床にべったり顔を付け、下からケンジョードの顔を覗き込んだ。


ケンジョードの目はしっかり閉じられ、口からは微かな寝息が――って!


「寝るなーーーっ!!!!」


バシーン!俺がケンジョードの頭をはたく小気味のいい音が響いた。


「…はっ!」


ケンジョード覚醒。寝るなんてふざけるなと言いたい。


「ケンジョード!寝てたけど呪文は見つかったのか?」


洋介が呆れた調子で聞いた。これは絶対見つかってないだろうと言いたげな口調だ。ま、洋介だけじゃなく俺も見つかってないと思ってるけどな。


「見つかったで御座る」


「「へ?」」


「だから、見つかったで御座る」


なんだよ。見つけてたなら言えよな。


「どれだ?」


心で愚痴をこぼしながらもケンジョードに尋ねると、ケンジョードは資料の一点を指で差した。


「この『JNPN:操』で御座る」


どれどれ…。


「『JNPN:操』は月光樹の幹とトカゲの表皮、香りの強いタンギ草を用いて魔法薬を作り、それを操りたい相手に飲ませ、さらにその相手に『操』の呪文をかけて完成する薬・呪が合わさった魔法である」


俺がそこまで読んだ所で洋介から怒りの声が上がった。


「なんだソレ!二重魔法かよ?」


「そのようで御座るな。レシル殿の話で、レシル殿は前触れなく何回も操られていたとの事。そこから拙者は長続きする二重魔法をかけられていたと見て間違いないと思ったで御座る」


ケンジョードが真剣な顔で頷く。その言葉に俺も続いて言った。


「『操られている人間は最初の方は意識、記憶がないが回数を重ねるにつれ次第に意識があるまま操られたり、操られた記憶が残っていたりする』と、書いてあるぞ!これレシルの症状と一緒だな」


実は昨日俺たちはレシルを呼び出して操られていた時の症状を密かに聞いた。レシルは呼び出されて不機嫌な顔をしていたが、驚いてもいた。俺たちの目的を話すと、「バカ…」と言いつつも詳しく教えてくれたので俺たちはレシルの症状については詳しく把握している。


ケンジョードは言った。


「一つ心配な事があるで御座る。レシル殿は逃げる際、火をつけたと言っていたが、レシル殿を操っていた人物は死んだかどうか分からないで御座る。もし生きているなら…」


ケンジョードはここで息を吸い込むと、続けた。


「レシル殿にかけられた呪文の期限はまだ切れてないからして、またレシル殿は操られるかも知れないで御座る…」


一同シーン。




「ニャーン」


そんな中沈黙を破ったのは我が愛猫、プー太郎だった。



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