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第10話:任務終了と俺の買い物


任務から帰った俺は肉体的、精神的に疲れ果てていた。


「またねん、翔くん。楽しかったわよぉ♪ジュル」


姉さん、涎。


「あらら、私ったら。教えてくれてありがとねぇ。それでは近いうちあいましょお♪」


チュッ。


口にキスだったがもう慣れた。この任務で大切な物を無理矢理奪われた気がする。


「……じゃあな」


結奈の去って行く後ろ姿を見送る俺。


「……」


ハア~っと溜め息。そして夕飯の買い物でもしてから帰ろうとくるり方向転換すると、


「うわっ!」


見知った顔がすぐ側にあった。


「お前~!見たぜ!チューしてるとこ!!相手は新しく入った零番隊の近藤 結奈さんだろ?

いいなあ~結奈さん美女じゃん!でも、雪さんはどうするんだ?諦めちゃうのか??」


言わずとしれた(?)洋介だった。

それにしても何このマシンガントーク。

いくら俺らが任務の時は出番なかったからって張り切り過ぎだろ。


「諦めるわけねえし。俺には雪ちゃんしかいねえの!」


「え?!じゃあ何でさっきキスなんか…」


目を丸くして驚く洋介。一応親友のこいつに言わないのもどうかと思ったんで、洋介には話すことにした。


〈説明中〉


「……って訳」


「まじ?結奈さん積極的だなあ!いいなあ~羨ましいぜ!」


「全っ然よくない!雪ちゃんの前で結奈にキスされようもんなら雪ちゃんに勘違いされかねない…」


「まあ、そん時はドンマイって事で」


洋介はカラカラっと笑った。くそう、人事だと思いやがって。


「そう睨むなって。立ち話も何だからどっか店入ろうぜ」


「やめとく。夕飯の買い物あるし、プー太郎を預けてるから引き取りに行かなきゃなんねーんだ」


俺は任務の間プー太郎の世話をダンのオッサンに頼んでいた。


「そっか、あ!一つ報告!レシルちゃんの事だけど…」


「…ああ。何だよ?」


「ぶはっ。顔恐えーって!レシルちゃんは教団に追われてるらしいから、取りあえず零番隊の建物に住んで貰うらしいぜ」

「ふーん…」


「報告はそんだけ!じゃあまたな!」


「おう…」




あいつが…同じ建物に住む、のか。

ぶっちゃけ、まだあいつを信じていいのか自分の中で答えは出てない。

よって、ばったり会っちまった時にどんな反応すればいいか分かんねー。…洋介はあいつを信じてる。ダンのオッサンも恐らく信じてるんだろうな。


でもさ!今までずっと親のカタキと思ってた相手が「実は私操られてたんです」とか言い出してもいきなり信じれるか!?俺あいつがナイフの血を舐めてるとこまで鮮明に覚えてるんだぜ!?



「へい、らっしゃいらっしゃい!美味し~い肉はいかが?」


「野菜!たくさん野菜が入ってるよ!」


「アタシの店は今タイムセールス!!安くしてるよ~!」


考え事をしながら歩いているといつの間にか賑やかな市場に着いたようだ。それにしても賑やかだな。


「……ん?」


見ると、白いテントの中から手だけが覗いて手招きしている。


「……」


これって怪しさ満点?

しかしそれでも!


俺は人妻に恋をした中年男性の止められない気持ちの如く(分かり辛いか?まあ頑張れ)、テントの中へ吸い込まれて行った。




「おおっ!何かスゲー!」


テントの中にはいかにも掘り出し物って感じの魔道具でキラキラしている。


「兄ちゃん、アンタァ運がいいやあ。今回だけ特別、何か一つ買えばおまけでこの小瓶が付いて来るよ~」


どうやら俺を手招きしていたのはこの親父さんらしい。それが緑がかった小瓶を振っておまけの存在を強調している。


「へー。何かあんのか?その瓶」


「それは兄ちゃんが買ってからのお楽しみだぁい」


「ははっ、おやっさん商売うまいじゃねえか」


「私は焦らすのが得意なのさぁ」


親父さんと談笑していると、沢山の魔道具の中でも常に怪しげな紫煙を発している玉が目に入った。


「?これは何だ??」


「買ってからのお楽し」「ふざけてないでちゃんと答えろ」


「ハイ…」


どことなく落ち込んだ様子の親父さん。さっきは褒めてくれたのにクソ餓鬼め…とか呟いているが、多分幻聴だろうネ。



「で?何なんだ?」


「その玉から出てる煙を吸うと本音がでちゃう不思議な玉だという噂だよ」


「ふーん…………買うか」


「まいどあり~~!!」

俺はおまけの小瓶と玉を持ってテントを出た。

このさい玉が偽物でもいいや。

俺が気に入ったんだし。


「…今から夕飯の材料買って、ダンのオッサンのとこいかなきゃな」



俺はすぐに帰りたい衝動を抑えて溜め息をついた。

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