ソロム攻防戦(3)
土曜日、日曜日には、9時・19時に投稿します。
よろしくお願いします。
「みんな、再度、確認だ。」
【ソロムの迷宮】の深部の【魔獣】は赤褐牛鬼。
そして、迷宮に放置された人間の武器が「なぜか」深部の怪物たちの手に渡っている。
しかも、人型魔獣であるため、それを使うことが可能で、武器を持つ人型魔獣の脅威は知っての通り。
こいつらの姿が見えたということは、過去の文献でいえば、【魔獣暴走】の主力が20階層に現れてきたということ。」
ここ、セーフティエリアには、【強化鎧】を纏う20人の騎士と、僕が布陣しています。
みんな、セーフティエリアの先の魔獣たちの動向に備えながら、騎士ウォードの指示を聞いています。
「できるだけ、敵愾心を稼がず、魔獣群を弱体化させるためには、【東雲の霧玉】をうまく活用するしかない。ただ、それには、俺達が毒霧を吸い込んでしまうリスクがある。
各自、徹底して防御に専念。リード君の身を死守すること。
リード君、頼む。」
「了解です。それでは、【東雲の霧玉】を起動させますね。」
僕の左右に2人ずつ騎士が立ちました。後方にも、騎士が布陣します。
【東雲の霧玉】に高位魔石を差し込むと、魔石の周囲が白い霧で覆われます。宝具の名前の由来はまた後で。
『大気よ。』
僕を含め、11人の騎士たちが、大気制御系の魔術で、ゆっくりと霧を、回廊の天井付近から迷宮の奥に流し込んでいきます。
【南の大迷宮】でのシミュレーションでは、濃霧となるまでには約1時間の作業が必要。
その間、魔獣群の動向を把握しつつ、慎重な魔術操作を継続する必要があります。
そうですね。言い忘れていましたが。
この世界での騎士とは、中級以上の魔術を操れる、高位の魔術師であることが条件です。そうでないと、強力な身体強化も、高位武装の使用も難しいからです。
そのため、騎士団には、大きな魔力をもつ貴族の子息や、その家系(士族)の者たちで構成されていることが多いです。
ちなみに、僕は初級の魔術しか取り扱えませんから、一般的には従士レベルであると自覚していますが、ピーキーな高位武装の取り扱いには熟練していますので、もしかしたら将来、騎士になれるかも知れませんね。