ソロム攻防戦(2)
土曜日、日曜日には、9時・19時に投稿します。
よろしくお願いします。
【ソロムの迷宮】20階層。
【南の大迷宮】との転移魔法陣のある区画はセーフティエリアとなっていますが、【魔獣暴走】が発生している現在、【魔獣】たちの挙動がどうなるかは不明です。
ただ、概ねの予想通り、魔獣は高層階を目指すため、転移魔法陣のあるセーフティエリアには進行方向を向けません。集団に押されてこちらに近づく個体はありますが、暫くすると上層への階段のある区画の方に移動を始めます。
では、セーフティエリアが安全なのか、そこから攻撃を加えても大丈夫なのかというと、それは異なります。ここから、魔獣の群れに何等かの攻撃を加えた時点で、魔獣の敵愾心を煽り、攻撃目標がこちらに向かいます。
先に、ダルトーム騎士団が集合魔術による攻撃を魔獣の群れに仕掛けましたが、魔獣の攻勢が激しくなり一時撤退。
一昼夜をおいて、魔獣の群れが再び階段区画に目標を定めたのを見て、新たに騎士や兵を【ソロムの迷宮】20階層に送り、再度、現在のように防御陣をつくった状態です。
「やはり【鋼持ち】か。やっかいだな。」
騎士ウォードが苦々しく呟きます。
【ソロムの迷宮】は、壁面が石積みの宮殿型迷宮。そのため、区画は概ね矩形に区切られており、相手の虚をつく不意打ちとか限定空間での爆破とかが強みの僕にとっては、相性が良くない迷宮です。通常であれば。
一方、集団戦を展開するダルトーム騎士団だと、攻撃防御とも強力な魔術装備と、攻防の役割分担による騎士の連携した動きが強みの騎士団にとっては、相性が良い迷宮です。通常であれば。
ただ、【魔獣暴走】時は、攻撃をしかけて所定のダメージを魔獣群に与えても、次の攻撃態勢が整うまでに、騎士が魔獣からの攻撃対象と認識され、猛烈な攻撃に晒されてしまいます(まあ、当然、分かっていることですが)。
ダルトーム騎士団は、練度が高く、伯爵家の宝具である【強化鎧】~まあ、魔石をバカ食いするようですが~を使った兵団を複数用意し、ローテーションでの攻略を試みましたが、数時間で【南の大迷宮】への撤退を余儀なくされました。
そこに【鋼持ち】です。
「みんな、再度、確認だ。」