ソロム攻防戦(1)
王族の儀礼に用いるという【翡翠の大鎧】。
その名の通り、翡翠色した身の丈3mの巨人です。ビルの1フロアの高さが約3mですから、非常に圧迫感が強いです。【迷宮】の通路は、それより幅員が広く、天井高も高いですが、周囲からみると、「通路を塞いでいる」感が強いと思いますし、相手からの飛び道具が確実に当たります。
故に、防御力が高くないと、役に立たない代物ですが、果たして大丈夫なのでしょうか。
何より、今回の作戦において最も重要なのは、空調機能です。有毒性のある恐らく金属性の粉塵や一酸化炭素が漂う空間に晒される可能性がある以上、操縦席の気密性と空調機能は必須となります。
また、【東雲の霧玉】を用いますが、これは宝具である玉に、高位魔石を挿入する作業が必要になります。この大鎧はかなりの出力がありますが、鎧を纏ったまま、細かい手作業をどう行うのか……
外見は、ずんぐりむっくりで、安定感を優先しているのか、脚部も相当太く、とても機敏に動けそうのないフォルムです。
断言します。兎に角、何が云いたいかというと、
『恰 好 い い !』
まさに強化装甲。
これに乗り続けられるなら、僕はずっとこの姿でいたい(無理だけど)。
実際に乗ったことのある王族の男子諸君はどう感じたのでしょうか。まあ、僕と感性は異なるかも知れませんが。
操縦席の気密性は大丈夫だったし(実験と称して水に浸かってみました)、腕部分は剛力かつ豪腕でしたが、指部分は一般男性なみの出力に設定してありました。腕力はあるが、握力はない、っていう設定です。まあ、そうでないと儀礼では使えませんよね。
【東雲の霧玉】については、初級ながら熟練の風使いである僕にとって、これぞという一品でした。
何せ、これまで小麦粉の袋を大量に運んだりしながら、【南の大迷宮】を逆走していましたが、これならコンパクトな収納用具で事足ります。
通常の使用度合であれば、自ら粉末を吸入することや引火による爆発等は起きないよう制御できそうです。
ただ、懸念しないといけないのは、使用後の環境への汚染度合ですね。迷宮に対する汚染の負荷度合の実験なんて行う時間はありませんので、この【南の大迷宮】の15階層のみでしばらく使用を重ねることになります。
装備の熟練度を上昇させるのに、これまで僕は、この15階層を巡回していたのですが、今後は安全性が確認されるまで、この階層を封鎖しておいた方が無難でしょう。