【オールラウンダー】アーチボルト・グレイン(2)
内密の話であるし、そもそもユーリも多忙を極めているので、協会長室には俺とリードの二人きりだ。リードは名残おしい表情をしている。ちょっとは隠せよ、このバカ弟子が。
「さて、リーよ。駆け引きなんかしてもしょうがないんで、二つ頼みを聞いてほしい。
一つは、【王家】の宝具の操作者、操縦者を探している。多分、伯爵家や騎士団からは云う気がないだろうから俺が云うが、お前にその役をやってほしい。
もう一つは、お前がため込んでいる魔石を分けてほしい。」
リードが不思議そうな表情を浮かべた。まあ、確かに不思議だよな。事情を聞かせてほしいというところだろう。
「【王家】の宝具の話は聞いたか?」
「いや、全然。」
「まあ、ダルトームは、ちょっと融通の利かない一族だからな。まだ、子どものお前に、命の駆け引きのような事はさせたくないんだろう。」
俺は、まだ冷めていない緑茶を口にした。
「【ソロムの迷宮】への攻略にあたっては、ダルトーム騎士団による重騎士団を突入させる。宝具を使うから魔石はバカ食いするが、騎士一人で巨人と差しでやりあえる兵装を、部隊単位で運用させるわけだから、【魔獣】の群れを一時的に崩壊させることは可能だろう。
だが、【魔獣暴走】による魔獣の数は想像がつかない。となれば、ローテーションを組んで、長期間にわたって戦線を維持していく必要がある。その戦線が崩壊した場合、【南の国】全体へ大きな被害を及ぼすことになるからだ。
そのため、【ダルトーム】は、できる限り、20階層からの戦線を維持させるため、高位の魔石と騎士団による攻略体制、探索者による支援体制を、現在、構築中だ。その作業はお前も【ダルトーム】で手伝っているんだろう?」
リードは、こくりと頷いた。
「そこで、【王家】の宝具だ。
まずは、【東雲の霧玉】。粉状の霧を生み出し、それを吸引した者を弱体化させる。その範囲は絶大で【迷宮】においても、階層全体に効果を表すことが可能だそうな。使用する魔石は赤系統以上。実際は霧ではなく、毒性の粉塵を大量に噴出させる宝具で、使用する者が毒を吸い込むリスクがある。」