(伯爵)ノーマン・フォン・ダルトーム(3)
「……、陛下、力を貸すも何も、まずは何事かを教えていただかないと。」
「うむ、伯を相手に余計なことをいっても仕方なかろう。【魔獣暴走】について、である。」
「もしかして、どこぞの【小迷宮】で【魔獣暴走】の兆しがあらわれましたか。」
「いや、ちょっと違うな……」
「違う?【ソロム】が、【南の大迷宮】の転移魔法陣への通路を封鎖したと聞き及んでいますが、それと関わりがあることかと。」
「うむ。その件の事だ。【ソロムの迷宮】で【魔獣暴走】が発生している。予兆という段階ではなく、すでに【迷宮】口での防衛に入った。」
「はぁ?何いってんだよ……!」
多分、俺、相当間抜けな顔をしているに違いない。つい、いつもの口調となったが不敬なんぞの問題ではない。
王も宰相も特に何もいわず、黙って俺の表情を見つめていた。
まあ、折込み済みってことか。俺もすぐに表面上は落ち着きを取り戻した。
「うむ。ノーマンは「飲み込み」が早い。改めて伯爵諸卿にも伝達するが、おそらく大騒ぎになるであろうな。もう少し、細かく状況を説明する。といっても、【南の大迷宮】からのルートが塞がれた以上、これからは陸路からの情報になるので、数時間遅れ…程度になると思うがな。」
【王都】と【ソロム】間の陸路で飛脚をずっと走らすのだろう。
他の都市ならともかく、【ソロム】であれば、比較的、新しい状況を常に仕入れることが可能だ。
「【魔獣暴走】発生の理由は、【ソロムの迷宮】の管理を概ね【王都】との連絡のため、20階層のルート確保のみに傾注していたそうだ。【協会】も交易の護衛派遣に注力しており、最近では【迷宮】の管理にはあまり力を入れていなかったらしい。どうも、20階層から下は、上級パーティーを含めて、全く誰も潜入していなかったそうだ。」
「だから、言わんこっちゃない……」
多分、俺、相当間抜けな顔をしているに違いない。つい、いつもの口調となったが不敬なんぞの問題ではない。
王も宰相も特に何もいわず、黙って俺の表情を見つめていた。
まあ、折込み済みってことか。でも、この間抜けな顔は当分戻りそうにない……