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(伯爵)ノーマン・フォン・ダルトーム(1)

ありがとうございます。総合評価1,000ptを超えました。うれしいです。


ところで、人間ドックが近いので、本日は多めの文字量で投稿してしまいました。

スマホの方には申し訳ないのですが、ご了承願えればと思います。


あと、本日中に、第25話と第26話の位置を入れ替えようと思います。

更新通知が行くかもしれませんが、これは更新ではないので、こちらもご了承願えればと思います。

「ダルトーム家は考えなしの連中だ」


 よく言われる。

 俺の名は、ノーマン・フォン・ダルトーム。ダルトーム伯爵家の現当主だ。


 唐突だが、ちょっとだけ、この国の歴史に触れてみようか。

 かつて、この大陸の南域には7つの邑があった。そして、7つの【迷宮】があった。

 【迷宮】は、【魔獣】を討伐することにより、【魔獣】の体内にある【魔石】という魔力の塊を得ることができる。


 一方、【迷宮】を放置しておくと、迷宮内の【魔獣】が地上に漏出し、邑にいる人々に襲い掛かる。また、仮に人々が逃げたとしても、迷宮の周囲の動植物を食い荒らし、【迷宮】を中心とする肥沃であった土地を著しく荒廃させていく。


 興味深いのは、周囲の環境を荒廃させていく中で、その【魔獣】達も徐々に力を失っていくということだ。【魔獣】の生殖機能は不明だが、【魔獣】は【迷宮】でしか生み出されないからだ。

 すると、人々もまた、【魔獣】の力を押し返して、少しずつ【迷宮】の周囲に集まり、やがて【迷宮】の上に邑を築きなおしていくのだ。


 そこで一部の邑主達は考えた。


「【迷宮】を組織的に制御することは、案外、【迷宮】の存在目的に合致しているのではないか。」


 皮肉なことだが、人と【魔獣】は敵対する関係だが、【迷宮】自体は、実は人々との共生を望んでいる存在なのではないかという考えだ。

 その考えは、ある程度長い期間をかけて7つの邑主が共有することとなった。


 7つの小さな国は【迷宮】とともに発展した。

 やがて、邑は町となり、街となった。

 【迷宮】は年を経るごとに深層階への道が開かれ、【迷宮】と【迷宮】をつなげる門が生まれた。


 7つの国の盟主は【もっとも大きな迷宮】を持つ街だった。

 【もっとも大きな迷宮】を持つ街は、近隣にも【迷宮】を持つ街があり、【迷宮】と【迷宮】をつなげる門を介しつつ、地上でも道をつないで、街と街が連携して【迷宮】を攻略しつつ、交易や交流を強化してきた。


 【南の大迷宮】を持つ【王都】を管轄する王家

 【ソロムの迷宮】を持つ【ソロム】を管轄するソロム侯爵家

 【サリウムの迷宮】を持つ【サリウム】を管轄するサリウム伯爵家

 【ロジウムの迷宮】を持つ【ロジウム】を管轄するロジウム伯爵家

 【ワートリムの迷宮】を持つ【ワートリム】を管轄するワートリム伯爵家

 【ラルシウムの迷宮】を持つ【ラルシウム】を管轄するラルシウム伯爵家

 そして、【ダルトーム】を持つ【ダルトーム】を管轄するダルトーム伯爵家


 この順位は、【王都】からの距離による順序である。

 【王都】から離れる程、その領の独立性が強い。【迷宮】自体の難易度も高く、【魔獣】の強度も高い。交易の不便さから他領からの支援は薄く、自領で自立した経営を営む必要性も高くなる。

 ただ、そうした中でも人々は都市の周辺の土地を開墾し、様々な産業を興し、道を広げた。

 それらの動きに呼応する形で、都市以外の地域においても、小さな【迷宮】も増え、様々な【迷宮】から得られた魔石の魔力は、主に「熱」に変換され、それらの土地に住む人々の生活を支え、恵をもたらしてきた。


 このようにして、国という、この地域、この社会を運用する仕組みが構築されてきた。


 7つの国の盟主を【王】

 【王都】以外の都市を管轄する伯爵家

 伯爵家の周辺の領地や【小迷宮】を管轄する子爵家と男爵家

 これらの貴族を支える士族

 社会の運用を委ねる平民


 ただ、社会や経済が拡大するにつれ、この「社会を運用する仕組み~かつての支配構造」では社会や経済が立ち回らなくなった。様々な価値や技術が少しずつ生まれ、交易が、一層、盛んになり、領地ではなく無形の財産を持つ法衣の貴族が生まれて社会の運用を支えるようになり、商家が経済を担う社会に変遷したのである。


 そのため【王都】の周辺では、わざわざ攻略難易度が高くリスクの大きい【迷宮】攻略に力を入れなくても、様々な食糧や産品を手に入れ、流通することができるようになってきた。

 すると、【王都】や【ソロム】の連中は、特に【ダルトーム】を、ようは「社会の変遷に乗り遅れた、ひと昔前の粗暴な者ども」のように見るようになった。


 ここが重要だ。


 俺は、これまで一貫して【迷宮】をしっかり制御することを主張してきたし、現在もそうだ。

 【王都】や【ソロム】の連中は【迷宮】を軽視しても~というより、【迷宮】にかまける時間や金銭があれば交易に費やしたい~領の経営が成り立ち、自分たちが豊かになるため、真逆の立ち位置である【迷宮】を重視する【ダルトーム】【ラルシウム】【ワートリム】の主張を鬱陶しいものと捉えているのだろう。


 確かに、俺たちと【王都】や【ソロム】では、【魔獣暴走スタンピード】によるリスクがかなり異なるのだ。

 たとえば、【南の大迷宮】で【魔獣暴走スタンピード】の兆しが表れたとしても、地下である【迷宮】からは各伯爵家からの支援ができ、地上からでも【ソロム】や【サリウム】から騎士等からの支援を受けることが可能だ。

 一方、【ダルトーム】や【ラルシウム】では、地下からは【南の大迷宮】からの転移魔法陣による支援に限られ~しかも、ルートがその魔法陣に限定されることから、その魔法陣自体にもかなりの負荷が生じている~地上からの支援は相当の移動時間と補給負担が生じてしまう。


 いや、違うか。


 やはり俺たちは、リスクの高低はともかく、一定の武力を持って【迷宮】と対峙する役割を担っているのだ。

誤字報告、いつもありがとうございます。


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