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(子爵)エミリ・ファン・ダルトーム(3)

 憤りをそのまま社交の場でみせるのは、貴族として不適切である。

 ただ、その感情を全て押し殺すのではなく、滲ませる程度で、表情や仕草で相手に伝えていった。


 ……ダメだ、伝わらなかった。


 近年、【王都】では、商家の力が強まり、その力を背景とする貴族が、貴族としての振る舞いを軽視している状況が増えている。ただ、そうやって付け込まれるのは、弱みのある~領の経営がうまく出来ていない~貴族のことであり、【ダルトームの迷宮】を完全に抑え込み、そこで得られた資産を適切に運用しているダルトーム伯爵家には関係のないことなのだ。


 そもそも貴族の役割とは、【迷宮】即ち【魔獣】を制して民に安寧を齎すこと。力を持つ者は相応の権威と義務を負うこと。近年、【魔獣】と相対することを時代遅れとする風潮が貴族の一部に生まれてきているが、武を尊ぶダルトーム派の寄子に、そうした考えが侵食しつつある……


 そんな事を考えていたときに、ウェデルは私の肩に手を伸ばしてきた。

 一瞬、頭の中が真っ白になり、自分の身体が硬直してしまう。

 そこに、リード君が、瞬時に、私とウェデルの間に割って入り、ウェデルの手を軽く払いのけた。


「小姓ごときが、私とエミリ様の会話に割り込み、あまつさえ、子爵嫡男の手を払うとは、礼を失するにも程がある。お前、少しは弁えろ!」


 ウェデルはリード君に掴みかかる。青年が少年に掴みかかる様を周囲はどうみるだろうか。ただ、リード君は一流の探索者。文官崩れのウェデルにどうこうできる存在ではない。

 それは分かっていても、ワーランド家の者がリード君に対して発する言葉とは、到底、認められなかった。


「ワーランド殿、失礼なのはあなたです。私の従士から手を離しなさい!」


 私の声は少し怒りに震えていたと思う。


「ワーランド殿。皆さんの面前で、子爵たる私に触れようとするなど、失礼にも程があります。それを防ごうとした私の従士に掴みかかるなど言語道断!」


「し、しかし、エミリ様……」


「そもそも、ワーランド殿は誰の許しを得て、私の名を呼んでいるのですか!子爵家の子息とはいえ、当主たる私に馴れ馴れしい、その態度!」

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