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(子爵)エミリ・ファン・ダルトーム(2)

 当然ながらリード君の父であるエーデ卿とは顔を合わすことになるし、その際には、将来、ダルトーム家の家人として、何らかの爵を叙して活躍してもらおうと思っていることを、父も私も伝えるつもりだった。


 本人は気軽な探索者としての生活を好むかもしれないが、伯爵領での文官・武官としての役割を約束されることは、子爵家の妾の子からすると非常に魅力的な提案だろう。


 リード君は聡い子である。

 これまで社交の場に出ることなく、ずっと自領に引きこもったままだったため、社交の場の振る舞いや他家の子息との付き合い等、多少の問題があるとは思っていた。ただ、こうして幾度か、社交の場での実践を重ねるだけで貴族としての振る舞いを身に付けることができるし、それは本人にとっても非常に有意義な機会であった。あるはずだった。


 エーデ卿は、リード君に気づかなかった。


 これまでどのような経緯があったとしても、本来、王立学園のある【王都】にいるはずのリード君が、小姓としての姿でパーティー会場にいたとしても、おそらくはエーデ卿は気づいたはずだった(気づくよう父と私が誘導したであろう。)


 しかし、ウェデル・ワーランドの「【王都】の連中と似通った上から目線で中身のない」提案とその対応に追われて、エーデ卿はリード君の存在に気が付くどころの状況ではなかった。


 そして、ウェデル・ワーランド。

 直接、リード君と相対しても、私が彼を「リード君」と呼んだのに、それですら自分の弟がこの会場にいることに気が付かなかった。


 貴族の家というのは、外見はよくてもその中身は、とても外の人達に見せたものではない事が多い。

 それは、伯爵家たるダルトーム家でも同様である。そう、同様である。


 しかし、他家には、周囲には悟られぬよう様々な手を打ち、対応するのが当たり前であろう。

 ワーランド家には、そうした他家への見え方への配慮すら足りない面が多い。本来、社交の場での見せ方の前に、自分の家の「外の人達に見せたものではない事」をうまく取り繕うことが肝要なのに。


 パーティーの会場にて、ウェデルの世迷い事~「エミリ様と一緒にダルトーム領のために尽くしても良い」~身の程も知らず、安易に伯爵家、私の配偶者としての立場を望む者は結構多く、自分に取ってのみ都合の良い提案をしてくる輩は、特に【王都】では良く見かけるが、まさか、【ダルトーム】において、ここまで直截的に言ってくる輩がいるとは。

誤字報告ありがとうございます。

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