(家庭教師)マノン・ベルナール
私の名前はマノン・ベルナール。
ワーランド家に家庭教師として派遣されています。
当主であるエーデ卿と特に縁があるわけではありませんでしたが、長男のウェデル様に仕えるもの以外には、あまり家柄とか能力とかには拘っていないみたいです。
家庭教師としての私自身のキャリアは、「中の中」くらいでしょうか。
一度、エーデ卿と面談したとき、コミュニケーション的には相性が良いというか、お話ししても特に違和感もなく、あっさりと嫡男以外の次男・三男の教育を委ねられました。
午前中には、別宅のリード様を指導して、本宅に移動して食事を摂って、午後からパール様の指導を行っています。
ちなみに、ウェデル様(長男)とパール様(三男)は実のご兄弟になります。そのため、将来、ウェデル様の直接のサポートをするのはパール様ということになります。
奥様からすれば、妾腹の子であるリード様など、捨て置いても良いと考えている節もあります。
貴族は血脈が大事ですから、万が一のときに備えて、どのような者にもそれなりの教養と役割を担わすことが肝要なのですが、やっぱり人間って感情の生き物なのでしょうね。
まあ、エーデ卿は、あんまり子供達の立ち振る舞いには、そこそこしか興味がないようですが。
今年も【一ノ月】から、また、ワーランド家にお世話になることになりました。
領主家の次男であるリード様は、顔つきも体つきも魔力も平凡という感じの子です。ただ、生来、本を読むのが好きらしく、同年代の子供達と比べると多くの知識を持っています。
ただ、いわゆる貴族が持っておかなければならない、貴族社会の知識であるとか領内経営手法のベースとなる知識であるとか、貴族に必要なメインの領域の知識というのは少なかったですね。
むしろ興味を持ちたくなかったということでしょうか。
これらが過去形なのは、ここのところ、メキメキと貴族社会の知識であるとか領内経営手法のベースとなる知識を習得しているからです。
おそらく、私が来ていなかった、この半年間で、何かのきっかけがあったのでしょう。体調を非常に崩され命の危険もあったと聞きましたが、体調はすっかり回復したとのことですが。
さて、これが「貴族として偉くなりたい」というような類の思いであれば分かりやすいのですが、勉強をやる気になってはいても、エーデ卿に良く見てもらいたいという感じは全くありません。
本当に、知識欲が旺盛になった、そんな感じでしょうか。
あと、じっと私の表情を見ているときがあります。
お母様が恋しいのでしょうか。
貴族の子は早熟な者も確かにいます。ただ、私自身、リード様と同年代の子を育てている身ですし、リード様も私の姿に母を重ねているのでしょうか。
何となく、母性本能をくすぐられて、ちょっとやる気になっている自分がいます。
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