「秋の交遊会」(1)
「リー君、なかなか似合うじゃない。ふふふ。」
エミリ姫様はにやにやと笑っています。
姫様は交遊会用の華やかなドレスを纏っていますが、僕も小姓用の式典時の正装でオメカシしている状況です。
僕としては、七五三とか、「馬子にも衣裳」を揶揄われているシチュエーションとか、そんな微妙な感じです。
ダルトーム領の「秋の交遊会」がはじまりました。
一つは交遊会。主に貴族とその家族が交流をする場です。大会場に数百人規模の人々が集うため、立食形式で丸一日を費やします。
余談ですが、そんな状況ですから、参加する全貴族に、会場に室が与えられる……ことは物理的に困難でして、このような大規模な交遊会に備え、特に子爵以上の領地持ちの貴族は、【王都】と【領都】に邸宅を持つことになります。
それだけの人数が集まりますので、丸一日かけても、寄親であるダルトーム伯爵に対し、寄子である子爵家や男爵家は、交遊会時は挨拶や多少のやり取りしかする時間はありません。物理的に。
また、伯爵やその家族は、合間合間で休憩は挟みますが、ずっと会場にて寄子の各家の相手をしなければなりません。
もう一つは各家での折衝・調整です。
交遊会に並行して、伯爵家と各家、各家同士で、様々な交渉や折衝が行われます。
交遊会当日は、各家の官僚や吏員達は、貴族とその家族、それらの世話をする家人達とは別行動となって、この折衝・調整を行います。
そのため、【領都】は交遊会前から慌ただしい雰囲気となり人とモノのやりとりが活性化します。「交遊会」の日からは、【領都】はまさに「お祭り騒ぎ」になります。
それで、僕、リード・ワーランドの状況です。
僕は、ワーランド家で、妾の子として肩身の狭い立場。父の配慮により王立学園には在籍を許されている程度のシチュエーションのため、これまでも今回も、子爵家の家族として「交遊会」に参加するという状況ではありません。
本来なら、王立学園の学生として、【王都】の領に籠っているはずなのです。
ただ、エミリ姫様に御縁があり、元家人であるクラークおじいさんの助力もあって、ダルトーム伯爵との縁ができました。(別に希望した訳ではないが。)
そして、臨時ではありますが、ダルトーム家の家人として、アルバイトをしている状況です。