交遊会の前日(3)
ここは「蛙の轢逃亭」です。
本当は、ムラクさん達、職場の皆さんとここで飲食をする予定でしたし、それは変更ないのですが。
それ以外のメンバーとして、女の子が二人います。
一人はモードさん。
現在、男爵家で勤められていて、ピート先輩の婚約者。
小柄で可愛い感じの女の子で、ムサイ探索者達から、ちょうとピート先輩がこの娘達を庇う感じだった様子。滅多にないタイミングでピート先輩がんばった様子。相当の高評価だと思われます。
そして、もう一人が、かつてワーランド家で僕の世話をしてくれていたレイラ。
彼女と自分の関係を紹介すると、みんなが「すごい偶然だね」と驚いてくれていた。
レイラもまた、男爵家に勤めていて、友人のモードさんと買い物に来ていたとのこと。
「リード様が、そこそこの使い手だという事は存じていましたが、あの輩達を一蹴できるとは思ってもいませんでした。」
「さっきまで、【南の大迷宮】に潜っていたからね。装備はそのままなんで、今なら、少々の「魔獣」でも討伐できるよ。」
「「さすがはリード君」」
ピート先輩とウェリス先輩が、多分、間違っていないなら、「憧れが入り混じったような眼差しで」僕を見ています。ちょっと困るのですが。
「リード様には重ねて感謝いたします。そして、何より、私達2人を助けてくれた皆さんに、本当に感謝申し上げます。ぜひ、何かお礼をさせていただければと思います。」
レイラは、ムラクさん達、皆さんに礼を言いました。
特にウェリス先輩を見つめる時間が、ほんの少し長かった様子。
そういえば、そもそもワーランド家に勤めて旦那さんを紹介してもらって……っていうライフプランだったのに、ワーランド家自体が落ち目で、しかも僕の方に割り当てられてて、いい話なんて来なかったんだろうな。
「お礼とかはいいですよ、我々はダルトーム家の家人ですし。モードさんもレイラも仕事中なんでしょう?モードさんはピートの婚約者という事で、何かあったら、また連絡をしてくれればどうでしょう。」
とムラクさん。
皆さん頷き、女の子達は仕事に戻るという事で。
去り際に、僕はレイラの元に行き、小声で囁きました。
「ウェリスさん独身なんだけど、それとなくレイラのこと、紹介しておいた方がいい?」
「リード様、本当に独り立ちされてて、私は嬉しく思います。」
レイラはきりりとした表情で。
「先程の話、ぜひ、ぜひ!」
小声ながら、きっぱりと僕に自分の意向を伝えるのでした。変わってないよね、やっぱり。