【南の大迷宮】(4)
南歴310年【九ノ月】
今月は、「秋の交遊会」がある月です。
王立学園は夏季休暇の最後に「秋の交遊会」がある形になり、この期間の数々の社交の場が終わった後、秋季・冬季の学期が始まるという感じです。
僕は、結構、アルバイトで稼いでいます。
ただ、以前は、エミリ姫様の【南の大迷宮】探索の斥候業務が主でしたが、エミリ姫様も学業と生徒会活動が忙しいらしく、探索修業はほぼ無くなりました。
云われてみれば、年替わりの休暇時期でないと、まとまったお休みは取れないんでしょうね。
でも、今の姫様の実力なら、【ダルトームの迷宮】の20階層まで攻略できるでしょう。
ダルトームの仕来りにもしっかり対応できるということで、伯爵家嫡子としての体面も万全。
美人だし、格好良いし、本当に言うことなしです。はい。
ただ、事あるごとに、「どうして自分のことをきちんと説明しなかったのか」と小言……いやいあ、お叱りを受ける感じなのは、何とかならないのでしょうか。
脱線しました。僕は、結構、アルバイトで稼いでいます。
アルバイトというより、寄親からの命令みたいな感じなんですが。
僕は、前世?では、何となくの理系でした。
なので、この世界の歴史やマナーは、もともとの知識+先生方から学んだ知識がベースなんですが、数学はやはり違います。
とはいっても、確率論とか統計学とか、その手の学問は、科学技術が進んでいない故、ほとんど学園のカリキュラムには出てきません。
さて、「秋の交遊会」という、派内の各領地間の折衝時期に入りますと、官吏の人たちの仕事がぐんと増えてしまうわけです。そして、僕のアルバイトは「生ける表計算ソフト」!
一定の暗算が得意なのと、工場運営のための収支管理のノウハウが仇となりました……
もともと数学は得意だよね? → ちょっと数字に関わる仕事を手伝ってもらおうかね? → 数字をきちんと整理できるスタッフがいるとめっちゃ便利だよね?(イマココ)
ということで、夏季休暇は、「秋の交遊会」に備えての各領地の財務状況の把握のための財務官僚の皆さんの「テ シ タ」の日々が続いていたのでした。
しょうがないので、空いた時間を何とか活用して、僕のライフワークを細々と続けている訳です。
ライフワーク?
はい、迷宮の奥底での爆破作業なのです。