【リード邑】(5)
続いて、研究所のニコラ・フォルマッテ嬢。
「魔術研究所としては、どの地点の魔素量がどのレベルであれば【魔獣暴走】が発生するのかという問いに対しては全く答えられない状況ですね。やはり、あまりにサンプル数が少なすぎます。ただ、たとえば【サリウムの迷宮】の50階層における魔素量、というより魔素の密度ですね。その増加幅で魔素の密度を検証するというのは可能ですし、そうした情報を元に危機度合を考えてみてはどうかと思います。
たとえば、【リード邑】付近での魔石確保において、非常に少量ではあるけれど、騎士団の習熟度では説明できない、【魔獣】の弱体化と、魔石の魔素量低下が見受けられます。やはり、77階層の開発と、それに伴う【魔獣】狩りにより、【大迷宮】全体での魔素密度の低下が生まれている。
そう考えると、【サリウムの迷宮】への一時的な介入は、多少なりとも効果があったのかと。」
「なるほど。
ということは、兎に角、【魔獣暴走】を発生させないことを最優先で考えたとき、現状、もっとも危険性が高いのは、みんなも承知の通り、【ロジウムの迷宮】であること。ロジウム伯爵は【協会】を通じて動こうとしているけれど、【中央派】の貴族達がいろいろ画策しているようで。
なので、対応するにも、王都の貴族達の動きに配慮しないと、政治的に足元を掬われかねないことに注意しないといけないこと。
そのうえで、【ロジウムの迷宮】の危険性を回避すれば……分団をどうするかという議論を置いておくとしても……77階層の開発に専念できるということ、ですね。」
「77階層の開発に専念」というところで会議参加者の目が一瞬輝いたのを、俺は見逃しませんでした。立場、立ち位置は違えども、リード分団の皆さんは、ワンチームなのです。
……立場、立ち位置は違っているのですが(苦笑)。
おっと、ベント卿の【魔眼】が起動しました。何となく、自分には分かりましたよ。
……いや、自分はちゃんとベント卿の云う事聞きますよ?本当ですよ?
「皆さん、リード分団で【ロジウムの迷宮】に一当てすればいいのではと考えているのですね。
ええ、そして、今から直ちにいってしまえばいいじゃないか、そう考えていますね。
気持ちは分かるのですが、少しだけでも政治に配慮しませんか。いろいろ横やりが入ったり、ダルトーム辺境伯にお叱りを受けたりするのは本意ではないでしょうし、そうすると「77階層の開発に専念」できるのは少し先になってしまいますよ。」
「少し先になってしまいますよ。」というところで会議参加者の目が一瞬曇ったのを、俺は見逃しませんでした。立場、立ち位置は違えども、リード分団の皆さんは、ワンチームなのです。
……立場、立ち位置は違っているのですが(苦笑)。




