(騎士団長)ウォード・フォン・サリウス(3)
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「はあ、胃が痛い。全く予想通りなのだけれど、貴族になって何もいい事がない……」
俺の名はウォード。ダルトーム騎士団の団長だ。
「ははは、本気でそう思われているのですね、ウォード卿は。」
詳らかに、その【魔眼】で感情を読み取られているのはあまり良い気はしないが、長年、騎士として御屋形様達に仕えていた身としては、それは慣れ親しんだ感情でもある。
ベント・フォン・メイレル卿。サリウム伯爵家の次男にして、先日まで嫡男ラルトネル卿と【サリウム】の家督争いを繰り広げていた高位貴族である。
多分、とある事情で家督争いは概ね終了しているものと推測している。
俺と比べると一回りは若い。リード君の兄と同級であるとのことだ。
明らかに中央派、経済派の高位貴族の子弟の典型的な人物像であったはずだが、【ソロムの魔獣暴走】後の混乱の中で、ダルトーム宰相のトルド卿の支援要請を請けてから、その姿勢は大きく変わったと思われている。
少なくとも、辺境派を愚か者と軽蔑する眼差しは一切無くなった。
【南の国】全体を考える上で、これまでの理不尽な認識に拘泥する貴族が未だに群れを成している状況で、ベント卿の持つ姿勢は非常に……国全体にとって……重要なものと御屋形様をはじめダルトームの人々は認識している。
もっとも、俺の認識は、俺自身にとって色々配慮してもらっていることに対する感謝が大きいということだ。
「ベント卿には常々感謝しています。やはり俺は騎士であり、自らの騎士としての最前線に耐えうる力を維持するためには、【リード邑】付近での修練が必要です。その段取りを卿がしてくれるお蔭で、こうして【大迷宮】の深層に訪れることができる……
相変わらず、御屋形様達も深層階に行きたいと?」
「ははは、御察しのとおりです。中央派の貴族では考えられない事態ですね。ちなみに研究所の面々も深層にはものすごく興味がおありの様で、ウォード卿の婚約者からは、リード卿とともに、いつも連れて行ってほしいと強請られているところです。」
おそらく王立学園においては、いつもリード君とニコル嬢が熱い眼差し(注:やや殺気が込められているかも知れない)で、ベント卿を見つめているのだろう。
その【魔眼】故に、非常に強い交渉力と、その力に付随する調整能力は、リード分団に所属するクセのある騎士達を手懐けるために必要な能力であったことだろう。
そして、魔素の濃度が濃密な【大迷宮】深層階において、身体強化・感覚強化の高位魔装を使い込むことによって、これまででは認識が薄かった自らの異能について、強く意識できるようになったことだろう。
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