ダルトーム騎士団(3)
ワーランド騎士団も王立研究所も、そこに所属する騎士や研究員達は、みんな、限界まで働いている……いわゆる労働法規などはこの世界にはありませんが、それでも組織の効率的運用のため一定の基準は設けられていますが、正直いって、騎士や研究員達は、休暇を取得してでも【リード邑】に行こうとするのが標準的な姿勢です。
いや、その筆頭が、この俺、リード・フォン・ワーランドなんですが。
いや、俺、本来は探索者ですからね。
それはさておき、【リード邑】での業務希望は騎士も全員だと云いました。はい、全員ということは、そこにウォード騎士団長も含まれるというわけです。そして、ウォード団長はその特権を笠にして俺に不当な要求を……
「最近、騎士団長自身も【リード邑】での業務を希望されるのですが、ウォード卿は非常に生真面目な方ですので、団長の職務外で調整しようとなされています。そうすると、事実上、深層階に降りる機会も相当に限定されている状況です。
そこで、数少ない機会においては、私が同行して、隙間時間を使って様々な課題に対する擦り合わせを行っているところです。
まあ、これが私の特権ですね。はははははははははははは!」
チクショー!これだから高位貴族ってヤツは!
ジェシカ嬢とエーベル嬢は、「ベント卿もこうやって冗談であっても高笑いとかしてみるんだね」なんて、ほのぼのと会話を交わしています。
そして、かつて貴族社会で幼少の頃から様々な交渉を重ねてきた高位貴族が、まるでダルトーム家のような脳筋思考に毒されつつあるところが心配です。
(そして、その予感は見事に的中するのですが。)




