入学式(3)
「リー君!どうしてここにいるの!」
僕とクラークが客間に入室して5秒後。
エミリ姫様の「ちょっと」大きい声が室内に響きました。
硬直する僕とクラーク。
同席している立派な服装の中年の偉丈夫はおそらくダルトーム伯で、少し今の状況を把握しようと思案している様子。
2人の家人か官吏と、2人の騎士。騎士の一人はウォードさんだ。この人も僕の顔をみて驚いている。
でも、僕のこと分かるのかなあ、服装も探索者のときと違うし。姫様も騎士ウォードも僕のことは平民だと思っているし。
……そもそも、自分が平民だなんて一言も言ってないし、貴族崩れの探索者も結構いるし、何より先週まで一緒にパーティー組んでて、正面から向き合って分からないってことはないか。
伯爵がじっとクラークを見る。
「伯爵閣下、いえ、御屋形様。ワーランド子爵家家人のクラークでございます。本日はお話しさせていただく機会をいただきありがとうございます。予めご報告したとおり、ワーランド家令息、リード・ワーランド様を紹介させていただければと思い、参上いたしました。」
「……ワーランド子爵令息リード・ワーランドと申します。」
僕とクラークは丁寧に頭を下げた。
「よい。これまで、長らく一つとして申し出のなかったクラークの頼みということで、これまで社交の場にでていないエーデの息子にあってみようと思ったのだが……。エミリ、この子と知り合いなのか?」
「知り合いもなにも……。リー君は、【大迷宮】に同行する探索者として一緒にパーティーを組んでいます。冬休みに入ってからは、ずっと一緒に探索してましたもの。」
「報告によると、ワーランド家においては、別邸に閉じ込められ、さしたる機会も与えられないが、独力で学び知見を得てきた姿勢を見てやって欲しいということだったが。」
「御屋形様。リード様はワーランド家で粗末な扱いを受けてきましたが、将来、探索者としてやっていけるよう、アーチボルト様の教えを受ける機会だけはエーデ卿から受けて、その後、自らを鍛えられておりました。が、王都の迷宮というのは何がなんだか……」
戸惑うクラークおじいさん。
そりゃそうですよね。いってないもの。
まあ、どれだけ【南の大迷宮】に潜っているかなんてタイムカードがあるわけでもなし、【ワーランドの小迷宮】から【南の大迷宮】に直行ルートがあるなんて事は黙っておきましょう。
というか、口は災いの元っていうし、まずはとにかく黙っておきましょう。