新学期パーティー【サリウム】(2)
「ははは。リード卿には仲介役を担ってもらっているというところかな。ロジウム伯爵にお願いしてこうした場を設けてもらったのは、家督争いについて自分が優勢であるからという確信があるからだよ。
リード卿、私もベントも、自分こそが伯爵家を継ぐに相応しいと考えているのは事実だ。そして、お互い隙あらば命を奪うことも辞さないとも考えている。ただ、別にそこまで私はベントを憎んでいるわけではない。なあ、ベント。」
「はあ、まあ……」
「私たちは、それぞれ『派閥の長』として対立している。相当の利権が絡み合っていて、もう引くに引けない状況になってしまった。まさに貴族社会における『よくあること』だな。ただ、自分自身は貴族家としての矜持と、派閥での自負心は別のものと考えている。
それはなぜか。それはサリウム伯爵家では、ベントの【魔眼】に見抜かれることだからだよ。私然り、父上然り、だね。」
ベント卿は肩を竦めた。
「お互い、抱えたものが大きすぎましたかね、兄上。周囲の甘い期待を一身に背負うのが伯爵家の宿命ですから。」
『派閥の長』としてはお互い殺し合いまでやってのけるが、家族としては、別に憎くも何ともないということでしょうか。うわあ、まさにお貴族様的発想。どうやったら、こんな人間ができるんだろう。あ、俺も貴族の一員でしたか。
ただ、確かに、【魔眼】持ちが家族にいたら、余程、その辺りの感情を整理しないと、貴族なんてやっていけないよね。
「ところで、兄上。兄上が家督争いについて自分が優勢であるという確信したというのは、一体、何なのでしょうか。」
え、そんなにあっさり聞いちゃうの???
「うん。ダルトーム辺境伯が、ラルク卿の後継を【サリウム】から出してくれといってきた。大いなる名誉と大いなる権限は、大いなる責務の元に。この国の宰相の座だよ、ベント。」