モーリー・アルベール
ああ、楽しくないパーティーですね。
僕みたいな低位貴族には敷居が高いです。何せ【学園】でのパーティーですから。
特に自分達の年代の少年少女たちが参加する社交パーティーの中では圧倒的に格式が高い。
まあ、ドレスコードは、【学園】の制服であることは気が楽なのですけどね。
ただ、僕自身はすでにダルトーム派閥……もっといえばリード分団かワーランド子爵家で働くことがすでにほぼ当確になっており、とても気が楽です。
だって、本来、若い時分に、こうした社交の場で調整することは、人脈を形成して、自分達の働き口を確保することですから。
D組ながら一定の人脈を構成してきた自分にとっては、新入生の時ほどの劣等感には悩まさられなくても済んでいるし、同様の境遇の学生とみれば、少なくともどんな奴かを見に行く位の余裕はありますね。
しかし、少しピリピリしているなあ。
【ロジウム】は、【中央派】の中でも【辺境派】寄りの立ち位置にいます。つまり、【ソロムの魔獣暴走】後、どの勢力にも頼りにされていると云えます。
ただ、その中でも密接な繋がりの在る【サリウム】は、嫡男派と次男派に二分して、一触即発レベルの鬩ぎあいをしている最中です。
どちらのつながりを優先するのか、多分、それがメインテーマとなって、貴族当主やその周辺の方々が意見交換をしている様子。
そんな中、会場に……ロジウム伯爵と、ベント卿の二人がにこやかに声を交わしながら姿を表しました。一気に会場がどよめています。それはそれで良いけれど、どうしてその光景の中心に君がいるんだよ、リード……
ベント卿がロジウム伯爵と微笑みながら握手をし、周囲にいる高位貴族の面々に小さく会釈しました。
次の日程があるのか会場の出口に進んでいく。そして、そもそも出口付近にいる僕達の方に近付いてくる。いや、気のせいじゃないな……
ベント卿は僕の傍に立つと、
「アルベール殿、君の活躍は聞き及んでいるよ。引き続き、ベント卿への支援を私からもよろしく頼む。頑張ってくれたまえ。」
そういって、会場を出ていく。その後ろで、リードが俺に目配せしていた。あれは「ごめんね」のサインですね。
二人が出ていった後の、みんなの視線が……。何か、この会場から出られない気がする……。