新学期(5)
入学式後、各領の勢力ごとにパーティーが開催されます。
昨年は、【ソロムの魔獣暴走】の影響もあり、概ね、この手の行事は自粛されました。
現在、【ダルトーム】が【王の矛】を担い、王家と【ソロム】と協調しながら、【ソロム】の復興作業を進めています。つまり、【南の国】全体の勢力図が変わっていく中において、貴族達は精力的に動きを活性化しはじめている状況です。
つまり、この手のパーティーは、今まで以上に重要な社交の場になるわけで。
今、自分の子息を入学させている貴族は、「ちょうと良い状況で、自分の子が入学してくれていた」と感じているところでしょう。
学園においては、通常、自分の派閥のつながりとは異なる新たなつながりを築くことのできる……少なくとも、通常の手段では得られない様々な情報の確保……が可能となります。
つまり、今の在学生は、【南の国】内の勢力図が変わるかもしれない……という時分において、他領の学生と仲良く過ごすことのできる機会を持てるということで……
「ということで良かったですな、リード卿。」
ここは、【ロジウム】のパーティー会場。
ちなみに、王立学園内には、侯爵・伯爵家ごとにパーティーができるよう、各講堂や大教室を開放できるようになっています。
ちなみに、王家は招待される側にしかならない仕組みなので、王家分の会場は設定されていません。
「案内しますよ」といって、ベント卿がすたすたと歩いていきます。
台詞だけでみれば、ベント卿が俺を案内しているという体ですが、客観的に、第三者的にみると、どうみてもベント卿に付き従う俺が、ベント卿の従者にしか見えないでしょうね。ぐすん。