【ワーランドの小迷宮】(1)
「爆発」は男の夢だと思うのです。
岡本太郎先生も確かそういっていたと思う。意味は違うかも知れないけれど。
「炎よ」
僕が小さく囁くと、迷宮の数十メートル先でドンとちょっと腹に響く音が鳴りました。
ほんの少し魔力を消失した気怠い感触と、魔獣を討伐したときに感じる経験を得たときの感触。
ライトゲーマーの自分でも、ついついハマってしまう育成の カ イ カ ン。
……。30代のオヤシの心の声なんて、どこの世界にも需要はありません。
いや、今の僕は11歳か。
この迷宮は、地方領主であるワーランド家が保有する小規模迷宮です。
迷宮は、【魔石】を生む資源ですが、小規模の迷宮の場合、その産出量は極めて少ないです。
その分、【魔獣暴走】の可能性も皆無な訳で、入口を門で閉ざしておけば、管理も必要ありません。
実際には、年に1回、領主家の騎士団が魔獣を退治・掃討します。
一定量回収できた【魔石】は、騎士団会計の歳入になるしくみなのです。
もっとも、今年は……、いや、そのことを今は考えるのをやめましょう。見込んでいたほど【魔石】が取れなくても、それは僕のせいじゃない、ということにしたい。
だって、僕がしたかったのは魔獣退治じゃなかったもの、最初は。
ここの小迷宮は2階構造になっています。
標準的な小迷宮を構成する単位は、80m×80mの高さ6mで1階層とし、低階層ではしきりがあって、部屋を形成することが多いのです。
そこで、僕は迷宮の部屋の中を爆発させることを思いつきました。
爆発系の魔術は、極めて膨大な魔力量と高いレベルの知識と技術を要します。
でも、この世界では「魔術で爆発を起こして、魔獣を退治してもオッケー」の世界なのです。
僕には「膨大な魔力量と高いレベルの知識や技術」なんてものはありません。
それは、どこかのアメリカンコミックのヒーローとかの話。
ここは、剣と魔法の世界なので、その辺りを勘案したとしても、やっぱりトップアスリートの世界みたいな努力と「才能」の話。やっぱり生まれつきの能力が足りないってものはしょうがないでしょう。
というか、平凡とはいえ、貴族並みの魔力量を持っていることが分かった時は、すごくワクワクしました、はい。
僕が持っている魔力適正は、火(発火能力)と風(気流操作)。
なんと自分はファイアースターターなのです。貴族では平凡な能力とはいえ、格好良い。
なので、この技術を磨き上げてみたい!
と思った自分は、ライトとはいえゲーマー心理として当たり前だと思っています。
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