エーベル・ロークライ(6)
【四ノ月】 王立学園生徒会役員室
「手紙にも書いているとおり、新学期の途中からでもいいから、できる範囲だけでもいいから、生徒会の活動を手伝ってほしいんだ。ええと、ジェシカさんが来る、来ないは関係なしにね?」
現在、生徒会役員室には、私と、生徒会長であるモルガン・ライデン先輩、副会長であるテイラー・ロジウム先輩がいます。
ほどほどに立派な設えの部屋です。先生方の部屋と比べても遜色のない調度の家具と広さ。まさに学生自治の砦とも云えます。
「ええと、先輩。生徒会役員改選の際、特に空席は生じなかったと聞いていたし、実際にそうなんですが、それでも私達を活動に参加させたいっていう、その趣旨……というか、本音のところはどうなのですか。」
「『本年のところ』など……、エーベル嬢、その、少し貴族としての振舞いを配慮してほしいのだが……」
……
全然どうでも良い小噺なのですが……
社交界での一定の面識がある相手であれば、基本的には相手のことを名前で呼んでもよいという習わしがあります。また、基本的には成人前の幼少期においての縁は幾分にも成人後に適用することも可能ではあります。
だからこそ、貴族は社交の場を幾度も設定し、そこに幼少期から参加することで、ある程度名前でも呼び合える人脈を培っていきます。
この度の生徒会長は、モルガン・ライデン公爵令息。ライデ公爵家の跡取りであり、準王族として、非常に立場の高い御家柄です。
その分、【ソロムの魔獣暴走】の影響も強かったはずで、相応の財産の棄損もあったこととは思いますが、それでも、その家の格は非常に高位なもので、その影響力も未だ健在であるともいえます。