エーベル・ロークライ(5)
ちなみに、目下のところ、学園内において注意を求められていた人の一人に、パール・ワーランドという男子がいます。そう、リード君の弟です。
リード君がワーランド家を継ぐ際に、もともとの嫡子側の勢力は失脚しました。その中にパール・ワーランドは含まれており、現在はほぼ平民に近い扱いを受けているとのこと。そのため、未だ敵意の眼差しをリード君に向けています。
以前と比較すると、パールの眼差しはもの凄く柔らかくなったとリード君は笑っていたのですが。それは冗談なのか、以前は本当に射殺すような視線をしていたのかは定かではありませんが……
「ねえ、エーベル。モルガン様から手紙が届いて、新学期の途中からでも、できる範囲だけでもいいから、生徒会の活動を手伝ってほしいってお願いがあったんだけれど。エーベルの方にもお願いしているって書いてあったので……エーベルにも届いている?」
「届いているよ。モルガン様には、きちんと断ったのにね。
ジェシカとリード君がきちんと婚約しても、まだ声をかけてくるんだね。」
「まあ、生徒会としては高位貴族の令息令嬢をしっかり囲い込みたいんじゃないの?まあ、モルガン君はライデン侯爵家の|後継者(跡取り)でもあるし、リード君の|案件(秘書業務)がなければ、エーベルちゃんは普通に入らされてるでしょうね。」
「アマンダ様は生徒会の役員にはならなかったのですか?」
「私は平民だからねー。オーランドは生徒会に入って頑張っていたから、そのお手伝いかな。オーランドはその頃からカッコ良かったんだよ。頭も良かったし、意外に役にも立ったし。」
たとえ学生の頃とはいえ、侯爵閣下のことを「意外に役にも立ったし」とは……
うん、今のアマンダ様の発言は聞かなかったことにしよう。そうしよう。