『迷宮学』(12)
「リード君……、【魔獣暴走】の危険性が高いことが分かっているなら、みんなで対応策を講じるわけには……。いかないってことは分かるんだけれど……」
ジェシカさんの発言に、エーベルさんが頷いています。
「誰でも分かることだし、自分には理解が及ばない世界だよ!」
「お嬢、リード君に聞くことが間違っているよね。この中で一番、貴族社会の常識からかけ離れている人だから、リード君は。」
僕の回答に、エーベルさんが不思議な発言を重ねてきました。訳がわかりませんね、失礼な・
しかし、ラウル先生含め、みんなが頷いています。こらこら頷くんじゃない。
「でも、エーベル。このまま【サリウムの迷宮】を放っておくと、一番困るのはサリウム領の人々とサリウム伯爵家だよね。」
「でも、お嬢。むりやり【王家】が介入すれば、【王家】がサリウム領を荒らしたってことになるし、そんな言いがかりをつけられてまで【王家】は【サリウム】に手を出さないよ。【王家】や他の貴族からみたら、【サリウム】で【魔獣暴走】が起きたとしても、それはサリウム伯爵家単独の問題だよね。」
「もどかしいですね。こうして『迷宮学』の講座の形でリード卿と情報を共有して、【サリウムの迷宮】の50階層の階層主の魔石を持って帰っていただきました。少なくとも、比較実験で、【サリウム】の【魔獣暴走】の危険性が低いか、低くないか、ということはこれで判明します。
故に、今度は、【魔獣暴走】の危険性が高いか、高くないか、が問われます。」