『迷宮学』(11)
現在、研究所で行われているのは、3種の魔石に含まれる魔素の含有量の比較調査です。
【サリウムの迷宮】【南の大迷宮】【ダルトームの迷宮】の50階層の階層主の魔石について、初回攻略分と、24時間後に再度出現した個体の攻略分の6つの魔石を比較します。
もしラウル先生の懸念が事実であれば、研究所やリード分団の見込みは、
【サリウムの迷宮】分は、初回分と再度出現分に、魔素含有量の差はない。
【南の大迷宮】分は、僅かではあるが、初回分より、再度出現分の方が魔素含有量は少ない。
【ダルトームの迷宮】分は、初回分と再度出現分に、魔素含有量の差はない。
……という見立てになっています。
「そうですね、私の仮設は【サリウムの迷宮】は、【魔獣暴走】の発生危険性が高く、そのため、迷宮内の魔素……特に最下層においては、【災厄】の発生要因となる、魔素の飽和した状態が長く継続しているのでは……という推測になります。
ただ、フォルマッテ先生の考えられているとおり、仮に比較試験で想定通りだとしても、それを持って【サリウムの迷宮】における【魔獣暴走】の危険性が極めて高いとは言い切れないのです。
今、行っている実験は高位の魔装具に各魔石を装着起動させて、どれくらいの時間で魔石の魔素が尽きるかどうか、です。一つの魔石で複数の魔装具を起動させる仕組みなので、【リード邑】で確保している魔石が、わずか3日で魔素が尽きる仕様になっています。」
「……それだけの負荷を与えたら、さすがに前後の魔石の負荷量は分からない感じがするね。」
ラウル先生の回答に対して、僕は率直に疑問を呈しました。
「リード卿のいうとおりです。しかし、限られた時間で計測する必要があります。なので、秒単位で計測するようにしています。誤差といえばそれまででしょうが、そこはできるだけ慎重を期して計測するしかないと思っています。」
あれ?
……すみません、投稿時間を1時間遅らせました><