50階層・【サリウムの迷宮】(11)
「【ソロムの魔獣暴走】の時だけど、魔獣暴走時は階段区画の階段を使って魔獣達は侵攻してくるわけだから、その時は必ず階段区画を魔獣は侵攻してきます。一方、魔獣暴走時の魔獣達の通路から外れている階層内の安全区画は、わざわざ寄り道してまで魔獣は向かってこなかったですから。」
『神の見えざる手』でも何でもなく、この世界の迷宮システムには何者かによる明確な設定、ルール付けがなされています。そのルールを詳らかにするのが、いわゆる迷宮学という学問ですが、【ソロムの魔獣暴走】により、新たに判明したことも多いこと。
安全区画の優先順位付けは、先般、魔術研究所の研究員から報告されたものでした。【南の大迷宮】【ソロムの迷宮】【ダルトームの迷宮】の、とりあえず3つの迷宮を検証したとき、いわゆる階段区画以外の安全区画は、例外なく、通常行程から若干外れたところに設置・設定されているということ。
特に今回は、もしかすると魔獣暴走の兆候がみえていること、何よりサリウム伯に黙って(というより、半ば強行突破して)この迷宮に潜入しており、サリウム騎士団勢の介入の可能性がゼロではないこと、を踏まえると、安全区画の選び方も自ずと定まってくるものです。
◇
ローテーションを組んで休暇を取り、再び、階層主の間の入口に陣を取ります。
徘徊する魔獣との遭遇に対処するため、簡易な柵と罠を設置。【大迷宮】に倣い、50階層の階層主の再度出現は24時間と仮定し、その4時間前から観測を開始します。
概ねの予測通り、時間どおり24時間後、階層主は再度出現しました。
中央に黒大豚鬼が1頭。
その周囲に15頭の赤豚鬼が群生しています。先程と一緒ですね。
やや一部の空間に靄がかかったような現象の後、魔獣がどこからか転送されたかのように出現するのが、魔獣部屋で観測できる共有の事象なのです。




