リード邑(9)
なるほど……
僕は、今度は「しっかりと」殺気を乗せて、オーガス主席研究員を睨みつけました。
横にいるモートン総務部長は顔色が青くなっています。もう一人、ニコル嬢は少しオーガス氏から離れて「だから嫌だったのに……」と小さく呟いています。ニコル先生、ごめんなさい。多分、あなたはそういう運命なんです、はい。
そして、オーガス氏自体は「ひいい」といいながら、椅子ごと後方にひっくり返っていました。
「命を賭してでもやり遂げたいとは崇高な使命をお持ちのようで立派だとは思いましたが、そうやってひっくり返っていると説得力が少しもありませんね。」
そういって僕は殺気を引っ込めました。
「重ね重ね失礼をいたしました。改めてお詫び申し上げます。今後はこうしたことのないよう【王立魔術研究所】としてリード卿の指示に従いますので、どうかご容赦いただければと思います。」
モートン総務部長が深々と頭を下げました。3隊長もまた一緒に……です。
隣にいるベント卿がため息をついていました。
「どうするんです?この雰囲気……」
「いやあ、失礼、モートン総務部長とオーガス主席研究員には冗談が過ぎましたね、ごめんなさい。」
僕は軽く頭を下げます。
「施設の再配置について、実は提案があって、皆さんに、この会議に集まってもらっています。
77階層について、結構、広大だけれども、その分、危険性や移動性を踏まえると、なかなか思うように、やりたいことができないって感じですよね。
そこで、軌道系の運搬車両の導入を提案したいと思います。」
僕は、机の上に広げてある77階層の概要平面図に、階段区画から長軸の線を一本引きました。
「港や鉱山に使われている軌道を、77階層に設置します。そして、その軌道の上を、随時、大型の運搬車を走らせます。それによって、物資も人も77階層内で大量に運搬できます。」