リード邑(4)
効率か……
ちなみに、前にも書きましたが、年始に、補講の合間をぬってソロム家には挨拶にいったけれど、オーランド候とアマンダ様には少しだけ言葉を交わす程度の時間しか取ることはできず、ジェシカ嬢とエーベル嬢の二人とお茶して帰ってきました。
なので、エーベル嬢が言付かった「数回、学校内を一回りする」が、アマンダ様の適切な助言ということでしょう。
「そうね、『効率が良い、っていったら、リード君、ちゃんと聞くから』ともいっていたよね。」
それは、希代の商家でソロム侯爵夫人たるアマンダ様の助言はちゃんと聞くに決まっているじゃないですか。まあ、「嫌なことは早く済まそう」という適切な助言内容なので、当然ながら効果は高いのですが。
ということで、僕たちは2日間、バル隊長を含めて騎士を伴って、学園内を歩きながら、生徒に皆さんに愛敬を振りまいてきました。ああ、貴族業って本当に面倒くさいなあ……
◇
【南の大迷宮】77階層は、階層そのものも区切りがなく魔獣が出現しない安全区画です。ここ数か月観測していますが、魔獣発生の動向も、他階層からの魔獣移動もなく、安全区画であることはほぼ間違いないと考えられます。
階層の広さは、長軸が約2.5キロメートル、縦軸が約1.5メートルの楕円形っぽい区画になっており、その面積は約350ヘクタール。いわゆる東京ドーム約76個分の広さです。
まあ、あまり実感はわかないのですが……、街が丸ごと入るような区画であることは間違いないです。
【ソロムの魔獣暴走】の時、50人規模の騎士団員が1か月余り常駐した設備を77階層に配備し、その後、階層主と魔獣部屋の相当による高位魔石の確保で77階層への物資搬入量を増加できたことから、現在、当初想定の倍である約100人の騎士と研究員が77階層に常駐している状況です。
ここまできたら、拠点というよりは、もはや邑ですね……
しかも、本来の僕の目的の一つは、下位階層へ挑戦するための探索者の拠点だったのですが、探索者は騎士と研究員のいざこざに巻き込まれたくなくて、少し距離を置いている様子。