リード邑(3)
騎士であり、リード分団隊長であるバル・ナツカー氏が、少し呆れた表情で僕を見ていました。
そんな眼でみられても……、だって僕のせいでもなんでもないじゃない……(いや、原因は僕なのですけどね)。
学園内につくと、教室まではリード分団の騎士4名が僕達に同行してくれました。
周囲にいる生徒たちが、しきりに僕に声をかけてきます。できるだけ、僕は一人ひとりに向かって挨拶を返していきます。
ようは、生徒達にとっては、保護者である貴族から「できるだけリード・フォン・ワーランドとの人間関係を築くように。まずは、声をかけることからはじめなさい。特に年始においてリード卿はほぼ学園内に留まっていたため、どの貴族も年始の挨拶をできていない。その点、学園に子弟を通わせている貴族に優位性があるので、しっかり声かけしてきなさい」という指示が下されているとのこと。
逆にいえば、僕が応答していれば、一応は家からの要請を答えたともいえます。
「でも、貴族家の中には、リード君と懇意にならないと、家に帰ってくることを許さない、なんて家もあるそうですよ。」
「バルさん、どこでそんな話を聞いてきたんですか……」
「ああ、結構、いろいろなところからです。自分の子どもがリード君と仲良くなって、その家は労せずリード君からの恩恵にあやかる……そんなご都合主義な思考回路をもつ貴族も多いことは、リード君もよく体感していることじゃないですか。」
「僕らって恩恵にあやかっているのかなあ?」「友達なんだから、そこはしょうがないじゃない。」
引き続き呆れ気味のバル隊長と、ちょっと冷たいマリノ君に、ちょっといやされるモーム嬢の言。
なんとか教室にたどり着くと、ジェシカ嬢とエーベル嬢が待ってくれていました。
ちなみに、教室入口には、ソロム騎士団の団員2人がついていました。年始の騒動が落ち着く(約2日と想定)まで、計6人の騎士が僕達についてくれるようです。
「母からは、リード君たちと騎士の皆さんと一緒に昼休憩と放課後も学校内を一回りしたほうが良いっていわれたよ。」
「お嬢、ちょっと言葉が足りないね。アマンダ様は『その方が効率いいよ。そうリード君に伝えておいてね』っていってたの。」