落人(2)
「時にリード卿、【落人】とはご存じですかな。」
「戦争に負けて、別の場所に行くしかなくなった人のことですか?」
「いえ、違います。別の世界から、こちらの世界に現れる人の事です。」
「別の世界から現れる?そんな人がいるのですか?」
少し唸り声を上げなから、園長先生は考え込んでしまいました。
「まあ、いいでしょう。リード卿の場合、貴族家としての知識に欠けている部分があることは承知していますから。別の世界からこちらの世界に現れる……【落人】については、貴族であればだいたい知っていることです。
数十年前には、【南の国】にもいましたし、現在は【東の国】に何人かおられると聞いています。
別の世界の知識を蓄えている方々ですので、【落人】をみつけたら【王家】を紹介し、その庇護のもとで生活を営んでもらうことになります。」
「そ、それって……軟禁状態?」
「ははは……、そうではなく、言葉も風習も分からない方々ですから、その世話を【王家】が担うということになります。異世界の人といっても、大きな魔力を持つわけでもなく、直ちに世界を変革する知識や能力があるわけでもなく、役に立たないから野垂れ死にさせるということを防ぐため、その庇護を【王家】が担うという考え方です。
直ちに世界を変革する知識や能力がないといっても、長い視点でみれば、この世界に役立つ知識などがあるともいえますので。」
「……今は、この国には?」
「おられませんね。しかも、風貌が異なるので大体一見して分かります。我が国でも【落人】の血が流れる方が多数いますが、やはり、【落人】その者とはことなる風体になることが常なので。」
「……園長先生、これってとても重要なことを僕に伝えているのですか?」