(王立学園園長)サーザイト・フォン・ロルドベイル(4)
南歴311年【一ノ月】 王立学園
「さすがに、時間は短いとはいえ、年を明けて初日に、補講の時間を設けられるというのは……。まあ、僕は家の行事をみんなに任せることができるので、むしろ幸せなんだけれども、園長先生は非常にお困りになられるのでは?」
リード卿の言葉には、私に対する嫌味であるとか、私が自分と同種の…つまり、私が面倒くさい貴族間の行事にでない理由をリード卿の補講に求めているという解釈…人種であるという誤解は感じられませんでした。
「そうですね。学園業務での出張以外、学園に顔を出さない日は一度もないのが唯一の自慢でしてね。まあ、それは施設の総括管理者としての立場もありますし、それを任されている家でもあるわけですから、家の長としても学園の都合が優先されるのですよ。」
今回の補講の件もしかりですが、騎士団分団の運用を、サリウム家のベント卿に委ねることで、リード卿への各貴族の当たりは相当緩くなりました。それは、実は園長である私もなのですが。
「年末年始ですら、補講に勤しむということは、不規則な行程で学園生活を過ごされているリード卿を、是が非でも普通に卒業させるという学園の意思が世に示されたということはとても重要なことなのです。だからこそ、ベント卿もそのための根回しをされたのですよ。リード卿は、良き先輩を身内に抱え込むことができましたな。」
能力もあるが野心もある、かのサリウム家の次男と共同するなど、辺境派の方々は何を考えているのかと一時期は思いましたが、リード卿の日頃の振舞いを……問題行動ともいう……見る限り、あの位の裏を抱えた御仁でないと、付き合うことができませんね。
「むしろ、他の貴族家の方々に、年末年始もリード卿を独占するのかと、私が各貴族家からやっかみを受けそうですが……私達は代々、学園の経営に専念してきましたし、正直、私もそれで手一杯なのです。変な誤解をする者も極めて限られているでしょう。」
「変な誤解……?」
「ああ、学園長である私が、学園としての立場を「利用」し、リード卿に便宜を図ることで、何某かの対価を得ようとしているという、そういう考え方ですよ。」
リード卿は、そうか、その手もあったか、というようなことを小さな声で呟いたようにも聞こえましたが、それは誤解か冗談のいずれかだと思います。思いたい。