(伯爵令息)ベント・サリウム(2)
最近、決して「良い色」ではないのに、この状況で実績を上げている者達が多い。
すべては「色」で決まっているとは俺も思わないので気にしなかった。そう、「技術」や「知識」、「経験」も素の能力に劣らず、とても重要な要因だからだ。
ただ、【ソロムの魔獣暴走】鎮圧後、これまでの世の中が変わってきた中。
その要因を、より意識してみると、次第に、俺の魔眼は、「色」だけではなく、「熟練しているという雰囲気」も併せて見える……感じるようになってきた。
魔力とその魔力の属性の色が濃いものには、感情の色も激しく、しかし、その「熟練しているという雰囲気」はあまり見えない。これは、今までと同じ光景だ。
しかし、「中央派」とはいえ、たとえば、下に見ていた……蔑んでいた成り上がりの商人などをみていると、「色」は薄く、そして狭いが、その「色」を取り巻いている「熟練しているという雰囲気」がその商人の「存在感」となっていたことがあった。
以前から、たまに「存在感」のある平民と向かい合うこともあった。
「色」は薄いが軽く見てはいけないとは感じていたが、まさか、その「雰囲気」が「存在感」に繋がっていたとは。そう、俺の魔眼は、相手の「存在感」を測ることができるようになったと考えられる。
これは、たとえ自らの派閥の者であっても秘めておくべき事実だろう。
ある意味、人の能力だけでなく、人の「実力」を見極めることができるようになった魔眼は、外交や交渉だけでなく、政務においても非常に強力な武器となるであろうことから。
◇
もともと、【王都】においても、サリウムの領主館とは別に、メイレル家の館を拠点として活動していた。
自派閥のものが閑職に回されたとしても、直ちに仕事がなくなるわけでもなく、派閥の会計の収支が赤字になるわけでもない。ただ、一旦、どこぞの勢力と連携と取る必要があるだろう。【王家】か。【ソロム】か。それとも……
エミリ・フォン・ダルトーム子爵。 【ダルトーム】の嫡子であり、王立学園では俺の後輩にあたる。【ダルトーム】のトルド宰相とともに、俺に会いにきた。
【ダルトーム】の内政に参画してもらえないかという依頼だった。
そう、中央進出をせざるをえない【ダルトーム】は、本当に人材不足の状況だ。【サリウム】にて派閥争いの中で劣勢になっている俺の状況をみて、交渉の余地があると見たのだろう。