初級魔術の授業(1)
僕の名は、リード・フォン・ワーランド。
持っている魔力量は、貴族の子弟としては一般的な量です。
貴族の家人として、領地の文官や騎士団の一員としての活動には問題ありません。
まあ、貴族としても、魔力量が一種のステータスとして扱われている点を除けば、あまり問題がないのかも知れません。だから、現在、『子爵』になっているのですが。
これから初級魔術の授業(講義)がはじまります。
担当教官は、ニコル・フォルマッテ女史。
魔術研究所の主任研究員でありながら、王立学園の講師を兼務。この一年は、【王の矛】であるダルトーム騎士団に加入し、かの【災厄】を仕留めた部隊の一員でもあります。
そして、最近では、ダルトーム騎士団長であるウォード卿との婚姻も噂されている様子。可愛らしい姿ながら、「私には研究しかない」と割り切っていた一年前とは随分異なる状況になっている様子です。
「リードさん、私をじっと見て何を考えているのですか。いえ、回答は結構です。どうせ碌でもないことを考えているのでしょうから。」
「ああ、ウォード騎士団長のことを少し……」
「ああああ! これから授業なのですから、余計なお喋りはやめましょう。ね、ね。」
……。さて、この授業の参加者を見てみましょう。
僕、リード・フォン・ワーランド。
ジェシカ・ソロム嬢。僕の婚約予定者です。
エーベル・ロークライ嬢。ジェシカさんの友人です。
マリノ・ポルセティオ君。ダルトーム地方の子爵家令息で第1学年からの友人です。
モーム・アマルティ嬢。ダルトーム地方の子爵家令嬢で第1学年からの友人です。
そうですね、いつも一緒に食堂で昼食を摂るメンバーです……
って、なぜ初級に、第2学期から、エーベルさん、マリノ君、モームさんが入っているのかということです。
はっきりいうと王立学園による超法規的措置らしいです。そんなに大それた事ではないのですが、大げさに言ってみました。
僕が子爵に叙爵するにあたり、相当の、本当に相当の混乱が生じたことから、通学時間内において、他の学生と、僕を、物理的・時間的に分断する時間を設けるためだとの事。
まあ、控えめに云って、謎の【モテモテ】状態で、多少、学園内に混乱をもたらしているという自覚はあります。