(騎士)オスカー・ベルグランド(5)
さて、冒頭に戻ろうか。
それにしても、こんな深層階において、平常心を保ったままで小休憩できるとは、学生の頃だと信じられなかった。リード卿……取り繕ってもしょうがないか。リード君、きっと、ちょっと怒るのだろうな。
まあ、誰が悪いわけでもないので、ざまあみろって感じかな。
「あーあ、これじゃリード君に怒られてしまうよ……」
「何、笑いながら言っているんですかコルテさん。まあ、何となくこんなことになるとは思ってはいましたが、ことの他、スムーズに進みましたね。」
斥候と先導を行うA級探索者(しかも上位)達。
非常に円滑に深層階の攻略が進んでいる。
こうして気の抜けた会話をしているが、確かに会話の内容は気も何も抜けているが、決して我々は油断をしているわけではない。
探索者団体【火蜥蜴連合】から、随時、2人の上位探索者が随行してくれている。
テザリオ副団長から俺が隊を預かってから、よく同行してくれるのが、今、随行してくれている【暗殺人】コルテ・ゲと【監修者】ササムクである。
【暗殺人】なんて碌でもない二つ名だが、こんな奴が【大迷宮】を飽きてしまったらどうなるのか、というくらい、上位の探索者の能力は凄い。
「何言ってるの。ダルトームの騎士にその宝具には、全く歯が立たないよ。まあ、80階層以降の最深層は、戦闘力というよりは生存術の良否が明暗を分けるんだけどね。
しかし、大砲虎鬼ですら嵌めて斃せるとなると、このまま、100階層まで行けるんじゃないかな、俺達で。」
コルテ氏は暗殺人とか呼ばれているが、見た目や言動は、気の良いその辺りにいるお兄さんと一緒である。ただ、闇属性の魔術と魔装を用いて、宝具を用いず、深層の【魔獣】を気配なく近寄り一撃で仕留めていく姿は、まさに【暗殺人】であろう。
そう、我々はすでに75階層の階層主である大砲虎鬼も、概ね20分4ターンで制圧してしまったのである。