(騎士)オスカー・ベルグランド(3)
以下が、今年の、リード君曰く「プロジェクト55」が開始されるまでの話だ。
【魔獣暴走】鎮圧して、強化装甲であるダルトームの宝具【王の矛】について。
当面、【南の大迷宮】50階層付近で活動する10名の騎士の強化装甲【王の矛】を、魔術研究所の全面的な支援を受けて、改修と機能強化を進めていくことなった。
「まずは、感覚的でもいいので、『ここに違和感があった。ここをこうしてほしい。』という点をどんどんあげましょう。その中から重要なこと、できることを順番に改善していければと思います。
ええと、どんどんじゃあれなので、1回の実験あたり、一人1万文字の報告書を出すことにしましょうか。ちなみに、あまりにくだらない報告書は分量倍にして書き直しということで。」
テザリオ副団長の苦笑を無視し、リード君は俺達にそんな要求をしてきた。
ううう、これぞダルトーム騎士団が脳みそ筋肉集団と呼ばれる所以。
「押せば押せ、引かずに押せ、とにかく押せ」という謎の謳文句。
報告書まで脳筋かよ!
そんな事をいっていたら、次の段階では「感覚的」な表記から数値的な表記にするよう、追加要求されてしまったのであった。
地上に戻り、報告書を上げると、今度は研究所の研究員が司会となり、我々騎士が参加して、『ここに違和感があった。ここをこうしてほしい。』という項目について、それぞれ、その根本的な理由を討議することが求められた。
実は、無数にある問題点も、その根本的な要因はある程度絞られたものとなり、それを改善することは明らかに不可能な項目が多いが、他方で、実は現時点でも対応できる項目も、実は相当数になった。(まあ、そのため、研究所側は具体な改修作業が目白押しとなり、さながら修羅場の事態になったという風の噂が……)
また、運用の面でも改善を図った。
一例をあげてみる。たとえば強化装甲から見た視界の確保。
強化装甲からみた視界は狭い。宝具の外郭である兜を変形させることは難しい。
なので、部隊の配置を精査して死角を小さくすることにした。また、休憩時や通常移動など、状況によって兜を取り外し、交換して簡易の装具を付けるようにした。