(講師兼主席研究員)ニコル・フォルマッテ(3)
「フォルマッテ先生は、ダルトーム騎士団への派遣時は、リード卿の従士という立場でしたね、確か。」
さては園長、「私はリードの部下である。」「それ故に、リードに関する課題はニコルが対応すべきである。」という論法で私を説き伏せようと考えているのでしょうか。
「今回の交遊会で、私個人もダルトーム騎士団の騎士として騎士爵の地位を賜りました。リード分団への配属が決まっているので、騎士と従士という関係ではなく、分団長と団員という関係になります。」
「研究所の仕事はどうされるのですか?」
「リード分団では、先般公表されたとおり、深層魔装や宝具を活用して、【南の大迷宮】の深層に拠点を整備していこうというものですから、今、私が研究している宝具の性能についての分析は、引き続き行っていくという形になっております。」
「ふむ。これからもリード卿と二人三脚で進んでいくということですね。」
「……、園長、もしかして、それを理由に、この書類の山を私に任せるなんて仰る、のではないのでしょうね?」
「いえ、あくまで学園に対しての依頼文ですから、これは私の方で対応しようとは思います。ただ、学園を通じての依頼については受け付けない、ワーランド家か騎士団に対して依頼してほしい、そう回答してよいか、リード卿に確認することはお願いできますか。」
「それは大丈夫だと思います。了解しました、園長。」
「私としても、生徒の父兄に対して、できるだけ配慮した形で返事をしていきたいと考えています。そのためには、寧ろリード卿が学園に対して、あまり協力的ではない姿勢でいていただいた方が、こうなっては問題が生じづらいと思っています。
さて、そこで一つ、フォルマッテ先生にお伺いするのですが、リード卿は貴族としての嗜みをどれくらいご存じで。
ああ、私なりに状況は聞き及んでいます。幼年時における貴族教育をほとんど受けておられない、その理解でよろしいですか。」
「それもあるのですが、リード様自身、年相応ではなく、すでに精神的には成人のような、そんな印象があります。ですから、それこそ『幼年期の貴族教育』をそのまま施すということは、やはり論外だと思っています。」
ですよね、そう呟いて、園長は微笑みました。え……
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