(筆頭侍女)レイラ・アンデライト(2)
他領でも同様とは思いますが。
ワーランド領において子爵家の家人というのは、概ね3つの区分に分かれます。
1つは騎士団です。
領内にある【小迷宮】や、そこから地上に這い出てくる魔獣を討伐するために設立された組織で、騎士爵にいるものが中心となって運営されています。ダルトーム騎士団が上位組織となり、優秀な能力を持つ騎士はダルトーム騎士団へ派遣されます。また、領内での警護も、騎士団が担っています。
現在も、王都を中心にダルトーム騎士団の一部が業務応援に赴いていますが、今後、国内の軍務をダルトーム騎士団が主導することになることから、領内の各騎士団も機能と規模の増強が求められることになるでしょう。ちなみに私の父も騎士団員です。
2つめは領内の経営を行っている文官達です。
主に、街にある領館を拠点として、徴税・財務や教育、産業振興等の業務を行っています。これまで、中央貴族の暗躍により乗っ取りに近い指示のあおりを受けていて、相当に厳しい職場であったと聞いていますが、現在は適切な領経営に切り替えつつあると、ウェリスさんはいっていました。
3つめは子爵やその家族に仕える人員です。
正妻……第一夫人を中心に、子爵家の家全体を運営していく人員となります。執事や侍女、調理人、家庭教師、馬丁等、庭人等といった面々になります。本邸と別邸の管理が中心になります。
ワーランド領の場合、筆頭家人である家宰が、その3つのグループを束ねていくことになります。
子爵家の家を守りする正妻の影響もなかなか大きく、筆頭家人を正妻の縁故に充てることも度々あったそうです(この前まで、実際にそうだったし)。
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現在、ワーランド子爵家の本邸には、新旧子爵であるエーデ様もリード様も住んでいません。また、子爵のご家族も住んでいません。
エーデ様の正妻であったナンシー様はワーランド子爵家から事実上放逐され、王都の実家であるモランツ子爵を頼ったところまでしか知りませんし(前述のとおり、おそらく、そこでも揉め事を引き起こしているものと思われ)、3つめの意味での家人は、概ねナンシー様の腰巾着でしたから、この邸宅に居場所はなく……
ということで、以前から残っているのは、リード様のお世話をしていた、トテクさん、ノールさんと料理人のナーダさんで、それ以外の人員はウェリス様が新たに雇用した者たちなのです。




