「総括の場」(12)
「ウォードには、当家で屈指の小麦産出量を誇るワーランド領の『後見』をしてもらうこととする。今後の事例になるため、ワーランド子爵及びエリオン領主代理と、よく話を詰めていってほしい。」
え……?
思わず僕はウォードさんの顔を伺ってしまいました。
ウォードさんもこちらを伺っていて、極力、表情には出さないようにしているようですが、おそらく僕と同じ表情をしています。
「「御屋形様の仰せのままに。」」
((そんな話、聞いてないよ、御屋形様!!))
「うむ。何しろ新たな取り組みなので、あくまで試験運用という位置づけにする。
たとえていうならば『領主が2人になる』仕組みであるが故、後継ぎの案件を含めて問題の多い仕組みになることが想定される。ただ、繰り返すが、これからの諸卿の役割と、その果たすべき責は大きくなることが必定だ。
なので、原則は『領主の希望によって』この制度は運用したい。ある意味、諸卿らの大好きな地位を増やすことになるので、そういえば、特に大きな文句はでないであろうと思っている。」
事実上は地位が増える……という解釈が出て、会場内の期待感が大きくなったのか、参加者の表情が明るくなりました。
「例外としては、本家が諸卿らの振る舞いに対して極めて不適切を判断したとき、家を断絶すると判断する前に、この仕組みを用いることも考えられる。
逆にいえば、大事になったときの選択肢が増えたともいえるので、それはそれで、みんなにとって悪くはない仕組みであろうと判断した。」
ダルトームからみれば、『選択肢が増えたので、状況に応じた罰が与えやすくなった』ともいえるのでしょうが、黙っておきます。
だって、これで僕は、領主の仕事をウェリス先輩に肩代わりさせることができて、男爵や親族達からの突き上げも、新ダルトーム騎士団長に任せることができるわけですから。
いかに、ワーランド領の面々もダルトーム地方の領主とは云え、『騎士の中の騎士』ウォードに舐めてかかっていくとこはあり得ないでしょう。そこまでオバカじゃないよね、みんな?
本日も後ほど投稿します。