「総括の場」(11)
領主の視点から見ると、様々な地位や立場の者達が入ってくるわけで、下手をすると自領が奪い取られるのでは?という懸念を持っています。
規模は異なっていても、王家、侯爵家、伯爵家においても、その点については強い危機感もあります。
ただ、ソロム侯爵家や他の伯爵家の視点からみると、【王の矛】となったダルトームが、王都や領都の【迷宮】に堂々と介入してくるわけですから、「少しでもダルトームと仲良くしておこう……」という意図もあるわけです。
そうやって、様々な思いや考えが交り合いながら、世の中って前へ進んでいくんでしょうねえ……
「併せて、ウォードには子爵に昇爵してもらう。
そして、これは新たな取り組みではあるが、ウォードには所領は与えない……というより、騎士団長としての役目をしっかり行ってもらいたいという意図で所領は持たせないように配慮する。
ただ、諸卿も分かっていると思うが、他領ともしっかりやり合って……ごほん、ごほん……折衝してもらう立場である。
そのことから、いわゆる法衣としての立場ではなく、一定の所領を『後見』してもらうこととする。具体には領への責務と貢献を一定の義務として、その対価を領からも得ることができるものとしたい。」
おお?
「トルドには、辺境伯家の宰相を受けてもらうにあたり所領を引き継いでもらったが、これも実務的には厳しい状態となった。そこで、お主の判断で、グレイン家の領主を任じてもらい、トルド自身もまた、子爵としてそれを『後見』してもらうことにする。」
「御屋形様の仰せのままに。」
宰相トルドは御屋形様に一礼しました。僕には分かります。トルドさん、表情には一切だしていませんが、湧き上がる笑いと喜びを抑え込むのに必死であるということを。
「ウォードには、当家で屈指の小麦産出量を誇るワーランド領の『後見』をしてもらうこととする。今後の事例になるため、ワーランド子爵及びエリオン領主代理と、よく話を詰めていってほしい。」
明日も投稿します。
よろしくお願いします。