プロジェクト55(7)
土曜日19時
日曜日10時、19時に投稿予定です。
現在、部隊運用している以上、作戦の指揮は現場指揮官の判断に委ねられる。
今回の場合は、副団長兼隊長のテザリオ卿だ。
もっとも、テザリオ卿は探索者ではなく、【迷宮】の深層探索の指導判断を行うのは難しい。
その意味でも、一流の探索者団体に協力を仰いで、今回のプロジェクト55に挑んでいる。
この階層主の攻略戦は、完全に騎士団の討伐行動に位置づけられた。
宝具【翡翠の大鎧】と【王の矛】の連動活動のため、クラン【火蜥蜴連合】の参加は遠慮してもらった。どう考えても、武具・防具の質に大きな差異がでて、作戦行動に支障が生じるからだ。
初撃の不意打ちの効果はどうか。
効果が乏しければ、消耗・殲滅戦に移行するし、効果が高ければ、もう一体に集中砲火である。
不意打ちを受けた黒単眼巨人は動かない……
テザリオ卿はあっさり、もう一体への集中攻撃を指示した。
「狸寝入りかも知れない」という疑念は不要だ。実際に被害を受けているのか、狸寝入りなのか、というより、もう一体への集中砲火を行う時間が設定できるかどうかが判断の為所だったからだ。
もう一体の黒単眼巨人は、こちらに接近するのか、炎線での攻撃を継続するのか、すごく迷いが見える。
それもそうだろう、【迷宮】での階層主戦なんて、階層主から見れば、常に「初見」である。
一方、こちらは、A級パーティーを擁する団体から情報を収集し、対応策を複数検討した上で、部隊運用による戦闘を行っている。
本来なら部隊運用を蹴散らす程の単体の攻撃力・防御力を、階層主は有するが、ダルトーム騎士団も「本来なら部隊運用を蹴散らす程の単体の攻撃力・防御力」を個々の装備が有している。
つまり、圧倒的な戦力差を事前に準備しての作戦なのだ。
ただ、ここは【迷宮】。不測の事態が生じる可能性は少なからず「ある」。
だからこそ、一定の感度を持って、部隊運用を続ける必要がある。
「油断大敵」 それが本計画での重要なキーワードとなっている訳だ。




