プロジェクト55(3)
王立学園の第2学年になってからの、僕の騎士としての仕事は、【南の大迷宮】における【魔獣】の負荷を取り除く作業に関わることでした。
【ソロムの魔獣暴走】に連動して、大規模迷宮で【魔獣暴走】が発生してしまえば、それこそ【南の国】の存在自体が失われてしまう可能性は極めて高いわけですから。
【迷宮】において【魔獣】を討伐し、そこで得た魔石の魔力を活用する。すると、この世界で使用された魔力は再び【迷宮】の元に還元され、【魔獣】が生み出される。
その循環を保つ事が、高位貴族の役割であり、だからこそ、高位貴族には上位魔術により【迷宮】を制御することが求められる……
これが、辺境派の貴族達の意識の底流にある基本認識なのですね。
過去の文献からもそのことは読み取れますし、残念ながら、【ソロムの魔獣暴走】という形で現世においても、その危険性を、国の皆さんが実感したと云う事でしょう。
【南の大迷宮】での【魔獣】の討伐に当たっては、宝具【王の矛】を使用して、特に【災厄】多頭大蛇の攻略に参加した騎士達と一緒に、50階層までを目標に迷宮攻略を進めてきました。
当然、僕はもっと深層まで、階段室の上下転移で移動することは可能です。
でも、なにしろ5階層おきに設置されている階層主部屋については、深層階ではまったく攻略していません。
さすがに単独だと、危険性が高すぎますので。
パーティー【悠々自適】の皆さんと一緒に階層主を攻略したのは50階層まで。
その後、2階層分を潜ったところで引き返しています。以前も云ったかも知れませんが、50階層を超えると、あまり迷宮に潜る旨みがないのです。
階層転移で消費する魔石の魔力と、【魔獣】の脅威度、得られる【魔石】の質量、これらを比較すると、50階層より浅い階層の方が、相当効率的なのですね。
その事をパーティーのみんなで実際に確認した、ってことです。
先程の上位団体が深層階の攻略を目指すのは、ひとえに、探索者としての名声を得ることと、いわゆる開発者魂の為せるところだと思います。