(講師兼主席研究員)二コル・フォルマッテ(5)
ということで、【魔獣暴走】鎮圧の折り、リードさんの功績に対する要望として、リードさんは【強化鎧】の改良を申し出されました。
悪いことに、魔術研究所としても、宝具改良はやってみたかったことの一つであり、各領の騎士団の損害を踏まえても、国防力の強化は喫緊の課題であったことから、改良作業はとんとん拍子で進みました。
……というか、これまで「経済派」の王族の意向で保留されていただけなのですよね。この改良。
終わってみれば、リードさんの要望に応えたというよりは、単に、これまで保留していた課題を解決した形になってしまい、ダルトーム伯爵は再び頭を抱えてしまったという経緯があります。
プロジェクト55。
それは【王の矛】を称することを許された【ダルトーム騎士団】の精鋭が、宝具である強化装甲【王の矛】を駆使して、【南の大迷宮】の深層を攻略するという、そのような壮大な作戦な訳です。
すこし宝具について。
宝具は、迷宮深層の武具、道具やそれを基盤に開発されたものです。
長い期間において、王族、貴族の間でのやり取りが行われ、特に性能が高いものを王家が所有するという形になっています。
というのも、宝具の使用は、相当の魔石の消費が必要であり、正直なところ、今回の【魔獣暴走】は極端にしても、高位の宝具ほど使えば使うほどコストが掛かるという状況です。
だから、性能の高い宝具は、王家に献上されている訳です。
その点、ダルトームの【強化鎧】を改良した、強化装甲【王の矛】は、伯爵家級の宝具でありながら、防御力や駆動時間等の一定の強化により、比較的に低いコストで、結構な機能を持つ、宝具の中でも「お得」なものに仕上がっています。




